取締役会に多様性が生まれることで意思決定が変わる
この詳細についてカスは、ハーバード・ビジネス・レビュー誌のインタビューにおいて次のように話しています。
カスは、続けて次のようにも説明しています。
複数的=流動的な「正しさ」を確保するための多様性
カスの研究から分かるのは、取締役会において男性中心の構成になっている場合、そこで形成される「正しさ」も単一的=固定的なものになりかねないという意味での警鐘であり、そうした単一的=固定的な「正しさ」が組織不正(不正行為を含む)につながりやすいという結果かと思います。したがって、女性役員によって別の「正しさ」が照らされれば、そうした単一的=固定的な「正しさ」が複数的=流動的な「正しさ」へと変化していくと考えられるのです。
もちろん、このように書くと、「これは男女の問題ではなく、視点の違いに起因するものだ」とか、「男性であっても別様の視点をもつことは可能だ」という意見も当然ながら述べられることと思います。しかし、私がカスの研究を踏まえて言いたいのは、女性(役員)には男性(役員)がもつことができない感覚や理解の仕方、着眼の仕方、表現の仕方など、様々な事柄が期待されるため、その可能性をもとに女性役員の登用が積極的になされるべきであるということなのです。
そして、欲を言えば、女性か男性かという性差のみならず、年齢、国籍、経験などにおいて取締役会(あるいは監査役会)の多様性が保たれることが大事であると考えられるのです。これはカスも指摘していることです。
1987年、鳥取県生まれ。2016年、神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了。博士(経営学)。同年より大阪産業大学経営学部専任講師を経て、19年より同学部准教授。22年から23年まで学長補佐を担当。主な著書は『社会問題化する組織不祥事:構築主義と調査可能性の行方』(中央経済グループパブリッシング)、『経営管理論:講義草稿』(千倉書房)など。受賞歴には日本情報経営学会学会賞(論文奨励賞〈涌田宏昭賞〉)などがある。
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