兄弟の母親は、息子の死に「刺し殺してやる!」と絶叫

この母親のカドラ氏は1988年にレバノンからドイツに来て、当時は3人の子供がいましたが、ドイツで更に5人子供を産み、そのうちの2人が今回犯罪を起こしたモハメッドとイブラヒムです。母親のカドラ自身にも複数の前科があります。数年前には娘たちと一緒にドイツのショッピングセンターで靴を5足万引きしたとして4カ月の懲罰刑を受けました。娘たちもまた窃盗を繰り返しており、人口が5万7000人程度のハーメルンでは、モハメッドを担当した女性裁判官が姉妹のケースも担当しています。大家族はいわば警察と裁判所の「常連さん」なのです。

救急車で病院に運ばれたモハメッドですが、残念ながら到着して数分後に病院内で死亡が確認されました。警察官および医者が病院前で大家族に対してモハメッドの死亡を伝えると、大家族は悲しみと怒りのあまり更にヒートアップ。医者が家族に対してモハメッドの死因について詳細を説明しようとしたところ、母親カドラが突然女性警察官の顔面を殴り、その際女性警察官のパールのネックレスが破壊されました。この時、カドラは女性警察官に対して「刺し殺してやる!」と叫び、他の警察官が数人で仲裁に入っています。

ある警察官は後の報告書に「この日の事態はKriegsschlacht(和訳「戦時中の戦闘」)のようだった」と書いています。大家族は警察官を叩いたり、蹴ったり、警察官に対して催涙スプレーを使いました。警察官もこれに対抗すべく催涙スプレーを使っていましたが、突然、一人の警察官が顔から血を流しその場に倒れこみました。大家族の誰かが投げたと思われる大きな石が顔に当たったためです。

警察官に石を投げ、モハメッドの運ばれた病院は封鎖

警察官はそのことにより鼻の骨を骨折してしまいました。血を流して倒れている警察官を他の警察官と救急医が病院の中に運び、男性は手当てを受けます。しかしその間、まだ病院前に集まっていた大家族が今度は病院の建物に向けて石を投げ始めました。こうして病院の下の階の窓ガラスのほとんどが割れてしまいました。病院の中の待合室で自分の番を待っていた患者らは恐怖からパニックに陥り、テーブルの下に隠れたり地面に伏せたりする人がいました。ちなみにこの時に破壊された病院の窓の損害は19161ユーロ(約330万円)です。

事態の収拾が全くつかなくなったので、たまたま比較的近い街のハノーヴァーにいた拘束部隊が緊急でハーメルンに呼ばれます。この部隊が病院の前に立ち、誰も病院の中に入れないようにしました。つまり病院は数時間にわたり閉鎖されたのです。病院内の人は誰も外に出ることができず、外部の人は誰も病院の中に入れない状態が数時間続きました。たまたま家族や知人の見舞いに訪れていた訪問者は数時間にわたり病院内にとどまることを余儀なくされました。