あいまいで頼りない情報で決めていないか

もう1つ心配なのは、現在ある2つの内定から、どちらかを選ぶにあたって、情報が不足している点です。

いずれの会社からも、仕事の内容や条件面について、もっとよく聞いてみることが必要です。

「サービス残業もあるらしい」とか、「担当する業務が具体的にわからない」。「条件面はよさそう」というのは、あいまいで頼りない情報量と言わざるを得ません。

給料はいくらになるのか、賞与は何カ月分程度の見込みで、残業はどの程度あるのが普通か。福利厚生についても、はっきりと尋ね、きちんと答えてもらえないようなら、疑ってかからなくてはなりません。

転職活動で内定をもらっているときは、気持ちが前向きになり、何かと好意的な解釈をしがちになります。

しかし、そんなときでも目をつむっていいことと、そうでないことがあります。

よくない面、たとえば通勤にかかる時間などもよく考慮しましょう。通勤が仕事そのものよりもたいへんという社会人はたくさんいます。

社員食堂があるのかないのか。利用できるのは、昼だけなのか、夜も大丈夫なのか。これだけで、自分のライフスタイルも、家族の負担も相当変わってくるものです。

「何がなんでもこの仕事」という選び方をしているのでなければ、少なくともこうした点もよく知った上で検討することをお勧めします。

ノートとラップトップを開いて作業
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「どうしてもこれ」と思わないのなら

どうしても現在ある2つの内定から、どちらかをと言うなら、給与のよいほうを勧めます。

今は、「興味のある仕事に取り組めるが、給料が安く、サービス残業もあるらしい仕事」と「どんな仕事を担当するのかわからないが、条件面はよさそうな仕事」で、選択に迷っています。

つまり、「どうしてもこれ」「ぜひともこちらを」と思っているのではありませんから、そこでわざわざ条件のよくないほうを勧める気にはなりません。

私自身も20代の終わり頃から、安月給と知りながら、たずさわる仕事の内容を優先してメーカーに勤めていたことがあります。

しかしながら、30代半ばによりよい雇用条件を求めて、転職を決意しました。

家庭を持って、自分の生活環境が変わったのに加えて、転職にも適齢期があると聞くことが多かったからです。

私は、「給料は安いけれど、仕事にやりがいがある」と言う若い人たちは知っていますが、同じことを言う中高年の会社員には、会ったことがありません。

質問者の方も、このたびの転職をされ、もう少し年齢を重ねられたときに、同じようなことを考える機会が訪れるかもしれません。

今は20代で、一般的に言えば、比較的不安も少ないときだと思います。自由に思い切った決断ができる時期ではありますが、安定した収入の大切さを忘れることなく、慎重に選択されることをお勧めします。

松崎 久純(まつざき・ひさずみ)
サイドマン経営・代表

もともとグローバル人材育成を専門とする経営コンサルタントだが、近年は会社組織などに存在する「ハラスメントの行為者」のカウンセラーとしての業務が増加中。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では、非常勤講師としてコミュニケーションに関連した科目を受け持っている。著書に『好きになられる能力 ライカビリティ』(光文社)『英語で学ぶトヨタ生産方式』(研究社)『英語で仕事をしたい人の必修14講』(慶應義塾大学出版会)など多数。