家計簿をつけて支出入を管理

同時に節税も考えましょう。

年金生活でおすすめなのは「ふるさと納税」です。

ふるさと納税とは、自分の故郷や応援したい自治体に寄付することで、寄付額の3割分の返礼品がもらえて、寄付金の2000円を超える部分については、住民税が控除される、所得税が還付されるといったしくみです。返礼品に食品をもらえば食費の足しになりますし、寄付控除も受けられるので、やらない手はありません。

夫婦共働きの場合、現役時代はそれぞれが生活口座に決まった金額を入金し、あとは「知らぬ存ぜぬ」というパターンが多いようですが、これから先は減っていく一方。夫婦それぞれが持っているお金は互いに知っておいたほうが、先々の安心感は大きいでしょう。どちらかが病気になったり、どちらかの親が倒れたり、いつ何があるかわかりませんから。

不安を解消するには、家計簿をつけるのもおすすめです。我が家の支出入を把握できると不安が解消されます。塾生の方には、「日々家計簿をつけるのが楽しみになった」という銀行員の方もいました。その人は真剣にお金と向き合うことで、「奥さんのことが心配だから、早めに遺言書をつくりたい」ともおっしゃっていました。日々のお金に向き合うことで、そこまで考えが広がっていくんですね。

代々木公園で微笑むシニア男性
写真=iStock.com/NicolasMcComber
※写真はイメージです

案ずるより働くが易し

とはいえ、70歳以降の年収激減に備えるにはやはり、年金受給を繰り下げて、75歳まで働くことを私は強くおすすめします。年利8.4%という“金融商品”は、なかなかありませんから。

そもそも年金をもらうときは、こちらから申請しなければもらえません。65歳で年金請求を行わなければ、自動的に繰り下げ受給になります。たとえ繰り下げていたとしてもやはり年金をもらいたくなったら、そのときすぐさま申請すればいいだけです。

「そうはいっても75歳まで働けるかどうか不安」という人も多いですが、塾生の方を見ていると、年齢が上がるほど、働きたい期間が延びていく傾向にあります。

たとえば60歳の方だと「働けて70歳ぐらいかな」という感じですが、65歳になると「いや、75歳までできるかな」、そして70歳まで働いている方は「もう死ぬまで働くぞ」という感じ。元気で働き続けていると、それが自信になっていくのです。

元気で長く働くコツは、とにかく「楽しく」働くこと。いやなことはしない。塾生の方もみなさん、自分のやりたいことを仕事にしていらっしゃるので、自分のペースで働いて、でもそれがなくなるのは寂しい、残念、それがモチベーションになって、「まだまだやるぞ!」という感じです。

定年後にお金のために働いている人はいません。定年後は「自分の幸せのために、いかに楽しく働いて、有意義にお金を使うか」。それが大切です。

つくづく「案ずるより働くが易し」なのです。

構成=池田純子

大桃 綾子(おおもも・あやこ)
キャリアコンサルタント

1981年、新潟県生まれ。東京外国語大学(中国語)卒業、慶應義塾大学大学院社会学研究科修了。三井化学にて人事・事業企画に約10年従事。丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスを経て、起業。Dialogue for Everyone 代表取締役。