なぜ国家公務員は魅力のない仕事になったのか
“国家の衰退につながる”とは、ゆゆしき事態だが、なぜ入りたがらず、入っても辞めたいと思うのか。
「国家公務員に就職した先輩から『最初から自分のやりたい仕事はできない』と断言されたのが印象的。新人の頃は雑務を行う印象で、意義を見出しづらい仕事も多いのではないかと感じた。それらを総合勘案し、民間の内定が複数ある状態で、わざわざ国家公務員を受ける気にはならなかった」
公務以外を就職先として選んだ学生に人事院がヒアリングした答えの一つである。また別の学生は「省庁でインターンシップをした学生や国家公務員の方から話を聞く限りのイメージだが、国会待機等をはじめとした理不尽と思われる仕事が多くあると感じることが多かった」という声もあった。
大学名は明らかにされていないが、もしかしたら東大生かもしれない。最近の学生はやりたい仕事やスキルを早期に身につけたいという傾向があり、とくに優秀な学生ほど自ら描いたキャリアを志向し、仕事を通じて成長実感を得たいという気持ちが強いといわれる。にもかかわらず希望する仕事をやらせてもらえず、理不尽な仕事を押し付けられる国家公務員を敬遠するのは当然かもしれない。
年々増加する残業時間
そのほかにも「国家公務員の業務量の多さ、深夜残業がネックとなり地方公務員を選んだ」、あるいは「労働時間に関するネガティブな情報の印象が強かった。特に国会対応等による長時間労働の報道を見ると、本当にやりたい仕事なのか疑問があった」という声もある。
今に限らず学生は以前から長時間労働は民間企業であっても嫌う。人事院の調査によると「本府省」に勤務する国家公務員の平均年間超過勤務時間数(残業時間)は、2019年は219時間だったが、年々増加し、2022年は397時間だ(人事院令和5年「人事行政施策に関する工程表」)。
年間397時間といえば、原則として月45時間、年間360時間とする民間企業の時間外労働の上限規制を超えている。