東大生の国家公務員離れが加速している。なぜ国家公務員志望者が減り、退職者が増えているのか。人事ジャーナリストの溝上憲文さんは「国家公務員は学生にとっては今や3K職場(希望する仕事に就けない、キツイ=長時間労働、給与が低い)であることは間違いない。民間企業であれば親からも『こんな会社に入るのはやめなさい』と言われかねないレベルだ」という――。
東大
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東大出身者が1割を切った

人事院はキャリア官僚となる2024年度春の国家公務員総合職試験の合格者を発表した。合格者数は1953人。大学別では東京大学出身者が189人でトップだが、2012年度に現在の試験制度になって以降、最も少ない人数となった。合格者の東大出身の割合は2015年度に26%を占めていたが、9%にまで低下している。

【図表1】総合職試験(院卒者試験・大卒者試験)出身大学別合格者数一覧
※人事院「報道資料」を加工して作成

官僚といえば東大出身というイメージは今は昔。その比率は大手総合商社と変わらないレベルにまで低下している。2023年秋と24年春の総合職試験の合格者数では東大に次いで京大、早大、慶應大と続くが、4位に入った立命館大学の86人が際立つ。他の私立大学では中央大学(61人)、明治大(42人)、東京理科大(39人)、日本大(28人)、専修大(18人)、上智大(11人)、中京大(10人)も入っている。

出身大学は国立大学が69校、公立大学17校、私立大学77校と、実に多様だ。一見、MARCHだけではなく日東駒専からも採用するメガバンクのユニバーサル採用に近いが、それだけ国家公務員試験のハードルが下がっていることを意味する。ハードルの低さは採用試験の申込者数にも表れている。

志望者数が激減、10年未満の退職者数増加

2023年度の国家公務員採用試験の申込者数は1万8386人。2012年度に比べて6724人(約27%)も減少している(院卒者試験・大卒程度試験)。それだけではない。採用後の若年層職員の離職が増加傾向にあり、総合職試験採用職員の採用後10年未満の退職者数は、毎年100人を超えている。東大をはじめ志望者が少なくなる一方で、離職者の増加に対して、最も危機感を抱いているのは政府自身だ。

国家公務員の“人事部”にあたる人事院の「人事行政諮問会議中間報告」(2024年5月9日)ではこう述べている。

「国家公務員志望者数の減少や公務を離れる者が増える現下の状況が続けば、公務を支える人材が質と量の両面で不足することになる。その結果、公務組織のパフォーマンスの向上はおろか、従前と同様のパフォーマンスの発揮すら困難になり、国民の安全な生活に支障を来し、さらには、国家の衰退につながりかねないことを強く懸念する」