女たちの本音と弱音をさらけ出した

1位 饅頭談義からの女の連帯(第15話)

私が大好きな「女の連帯」が凝縮されていた第15話。女子部宣伝もかねて、法廷劇を催すことになった寅子たち。題材は大学側から提供された実在の「毒饅頭事件」。詳細は割愛するが、要するに女性の同情を集めるために事実とは異なる、改ざんされた内容だったと判明する。

寅子の家で饅頭を作りながら議論する仲間たち。女はいつの時代も都合よく使われるということ、大学側が無意識に女をなめているということを話し合う。

吉田恵里香、豊田美加『NHK連続テレビ小説 虎に翼 上』(NHK出版)
吉田恵里香、豊田美加『NHK連続テレビ小説 虎に翼 上』(NHK出版)

よねは怒りを露わにするが、そこに母も花江も参加して、弱音と本音をさらけ出し合う流れに。誰に対しても批判的なよねが、花江の参加によって、仲間に敬意を払っていることが伝わる。

また、選んだ道や考え方が違っても、話し合うことが大切だと説く場面でもあった。ただし、この議論をまとめたのが途中から入ってきて何もわかっていないくせになぜかしたり顔の兄・直道というオチ。大爆笑でもある。

寅子がよねに「あなたはそのままイヤな感じでいいから。怒り続けるのも弱音を吐くのと一緒。私たちの前ではそのままで」と伝える。ぶつかってこその連帯。本音をぶつけあってこその連帯。いろいろな要素が凝縮された名場面だったと思う。

いつの時代も学歴コンプレックスはえげつない

次点も紹介。4位は「めっちゃ可愛い 寅子のローリング同衾(第37話)」だ。寅子と優三が社会的地位の向上のために結婚。初夜の場面を覚えているだろうか? 気を遣って手を出そうとしない優三に対し、寅子がゴロゴロと転がって同衾し、誘うのだよ。可愛い性欲に頬が緩んだ。これを「ローリング同衾」と名付けてみた。

5位は「男もスンッとなる 学閥コンプレックスの妙(第17話)」だ。自分を押し殺したり、押し黙る「スンッ」は何も女に限ったことではない。

脚本の妙と感心したのは第17話。寅子たち(男子学生も)が講義について甘味処で話している。そこに偶然、大庭梅子(平岩紙)の息子が登場。彼が帝国大学の学生とわかると、明律大学の男子たちが皆、急に無表情に。男も「スンッ」である。その理由は優三が解説。

明律の法学部生は帝大に強い憧れとコンプレックスを抱いているため、目の前にいたら嫉妬と羨望で普通ではいられなくなる、という。彼らの「スンッ」は令和にも通じるものが。男性の学歴コンプレックスはえげつないから。あ、女もか。