専業主婦世帯を優遇する制度を温存する必要はあるのか

4割近い専業主婦世帯で子どもがいないということは、多くの人にとって意外な事実です。つまり、彼女たちは出産・育児のために仕事を諦めているわけではないのです。

今、厚生年金保険の適用拡大が議論されています。同時に専業主婦を含む年収130万円未満の配偶者が対象となる第3号被保険者制度の見直しの議論もようやく進められようとしています。専業主婦世帯より共働き世帯のほうが子どもを多く産み、育てていることを考慮すると、第3号被保険者制度や配偶者控除などの「女性が働くことを制限する制度」を温存し続けることは少子化を改善したい日本にとって得策とはいえません。

働かないインセンティブを与える制度を温存するよりも、妻の稼ぎにかかわらず子どもがいる世帯を優遇する両立支援策、子育て支援策のさらなる推進が求められていくでしょう。

それは、子どものいない割合が増え、子ども2人以上の世帯比率が低下する専業主婦・共働き両方の世帯の出生数の落ち込みへの対策になるはずなのです。

(*1)天野馨南子(2020)「実は共働き家庭のほうが産んでいる 統計データが語る「女性の社会進出こそが少子化の元凶」はなぜ真っ赤なウソか」プレジデントウーマン
 (*2)図表1~4は、天野馨南子研究員の分析と同じく、夫の全年齢階層の値を使用しています。この場合、日本の夫婦の全体の状況がわかる反面、65歳以上の高齢者も含まれてしまう点に注意が必要です。
(*3)内閣府男女共同参画局(2021)「結婚と家族をめぐる基礎データ

佐藤 一磨(さとう・かずま)
拓殖大学政経学部教授

1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。