ChatGPTは多数の異なる言語世界をつなぐ

日本人の論文が日本語だけで発表されれば、世界に認められるのは難しい。少なくとも英語で発表される必要がある。その場合に、自動翻訳では不十分なことがあるだろう。

日本のプレゼンスを世界に示すためには、論文の著者が、少なくとも英語でコミュニケーションを行なえることが必要だ。この必要性は、自動翻訳がいくら進歩しても残るだろう。

ところが、日本国内では、ChatGPTなどの自動翻訳によって外国語を理解できるようになるので、日本人が英語を勉強しなくなり、その結果、世界で日本のプレゼンスが低下するおそれがある。この問題はこれまでも存在したが、それがさらに大きくなる危険がある。

これは深刻な問題であると考えざるをえない。

かといって、日本語をなくして、日本人が英語を使うようになればよいというわけではない。日本語が消滅すれば、日本文化も消滅してしまう。

言語の多様性は文化の多様性のために重要な意味を持っており、そして文化の多様性は、進歩のために不可欠だ。すべてが同一化してしまえば、進歩はできない。

ChatGPTは、多数の異なる言語間をつなぐことによって、様々な言葉の存続を可能にする。ただ、その世界で生き残るためには、独自の文化を持っていることが必要だ。

青い背景の上にコードからぶら下がっている外国語の書かれたカラフルな吹き出し
写真=iStock.com/BrianAJackson
※写真はイメージです

外国語の勉強そのものに意味がある

私は、日本人がChatGPTを利用して英語などの外国語の勉強を進め、それによって世界に出し、そして海外の人々や文化を受け入れる社会が実現することを望みたい。

それは、英語教育だけの問題ではない。

フランス語やドイツ語を日本人の誰も理解できないという社会は、わびしい社会だとしか思えない。勉強することが容易になるのだから、人々が外国語の勉強を続けるような社会を望みたい。

さらに、勉強そのものに意味がある。勉強は、何らかの手段として必要というだけでなく、勉強すること自体が楽しく、意味があることだ。

外国語の勉強についてもそうだ。ChatGPTによって、人間が外国語を理解し、使えることの必要性が低下したとしても、なおかつ外国語を勉強することが望ましいと思う。

この考えには、多くの人が賛同するだろう。

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