かわいがっていた甥っ子は早逝、異父姉と同居することに
しかし、チエミが精いっぱい明るく楽しく生きようとする一方、高倉の仕事は多忙になり、すれ違いが増えていく。そんな中、チエミは実兄の子・サトシを自分の子のようにかわいがり、養子にしようと、一時は一緒に暮らすようになる一方、子供に恵まれなかった思いは埋められず、歌手に復帰。新たにミュージカルにも挑戦し、成功を収めるが、1961年、かわいがっていたサトシを突然の事故で失う。
さらに、その翌年、チエミの運命を大きく狂わせる女生徒の出会いがある。母が不倫相手との間に作った異父姉A子が現れたのだ。A子は夫と別れ、1人で子どもを育てていると言い、そんなA子の境遇に心を痛めたチエミはA子を同居させる。
小柄で地味な服装で、物腰の低い献身的な“姉”をチエミは信用し、高倉も喜んでくれていたが、その頃から徐々に高倉の足は自宅から遠のくようになる。さらに1970年、高倉・チエミ邸が火災に遭うと、夫婦はしばらくの間、ホテル・ニューオータニに宿泊することになる。
信頼していた姉はチエミと高倉の家を勝手に抵当に入れた
しかし、そこから夫婦の絆が強まるわけではなく、高倉はますます帰らなくなり、心配するチエミは食事もとらず、夜も眠らないことから一時入院。その後、マネージャー兼付き人だった長兄も急死し、その半年後にチエミと高倉は離婚する。
実は夫婦の離婚の原因には、A子の存在があった。A子は実印を使ってチエミの銀行預金を使い込み、高利貸しから多額の借金をしてチエミ・高倉邸を抵当に入れていたのだ。
評伝では、清川虹子がチエミ・高倉の離婚について、こう語っている。
藤原佑好『江利チエミ 波乱の生涯 テネシー・ワルツが聴こえる』(五月書房)