結婚20年以上の夫婦が離婚する「熟年離婚」の割合は年々増加している。離婚・男女問題に詳しい弁護士の堀井亜生さんは、「熟年離婚の中でも、高齢の夫婦の離婚、いわば『老年離婚』のケースも増えている。老年離婚の場合は、住居やお金などの問題もあり、子ども世代の協力が不可欠になる」という――。
※本原稿で挙げる事例は、実際にあった事例を守秘義務とプライバシーに配慮して修正したものです。
結婚指輪を外す年配の女性
写真=iStock.com/TolikoffPhotography
※写真はイメージです

71歳の主婦「2歳年上の夫と離婚したい」

主婦のA子さん(71歳)は、長年にわたって、2歳年上の夫と不仲の状態が続いていました。

夫は定年後も嘱託として週3回勤務をしています。

気性が荒い夫も年を取れば穏やかになってくれるかもしれない……。そう思って我慢し続けてきたA子さんですが、現実はむしろ反対でした。夫は昔よりさらに気難しくなって、いつもイライラしているため、家にいる時は怒鳴り合いのけんかが絶えません。

時には物を投げるような激しいけんかになるのですが、結婚して家庭がある長女とはあまり連絡を取っていないため、A子さんは一人で夫へのストレスを抱えていました。

A子さんは、この先に控えているであろう夫の病気や介護の問題を考えると、先の短い人生を夫から離れて過ごしたいと思うようになりました。

なかなか家を出ていかない夫

A子さん夫妻が住んでいるのは、A子さんが親から受け継いだ一軒家です。夫が出て行ってくれれば住む場所の心配はないので、何度も夫に離婚を切り出して、「出て行ってほしい」と言いましたが、夫は出て行く様子はありません。

困ったA子さんは、私の法律事務所に相談にいらっしゃいました。

A子さんは、「離婚調停をすれば夫は諦めて出て行ってくれると思う」とおっしゃいました。

とはいえ、一般的には、同居した状態での離婚調停はおすすめしていません。せっかく調停の場で第三者を交えて離婚の条件などの話し合いをしても、二人が同じ家に帰ってしまうと、またけんかをしたり、話し合った条件を変えてしまったりして、意味がなくなってしまうからです。

そのため、私は、まずA子さんが一時的に家を出ることを提案しました。夫にとって、同居している家から自分だけ出て行くのは、心理的に抵抗感が強く、一人になった家から出て行ってもらう方がすんなりと進むことが多いためです。

仮住まい先のあてを聞くと、A子さんは、「長女の家に住めなくはないけれど、子どもに迷惑をかけたくない」と言いました。

とはいえ、遠慮していては話が進みません。A子さんを説得して話をしてもらうと、長女はてっきり両親は年を取って穏やかに暮らしていると思っていたそうで、「母が困っているならもちろん協力する」と言ってくれました。

こうしてA子さんは長女の家に移りました。