孤独から抜け出すにはどうすればよいのか。スウェーデンの精神科医、アンデシュ・ハンセンさんは「他の人と連帯を感じるたびに脳が「幸せな気分」というごほうびをくれる。ひとり暮らしの人を対象とした実験から、週に何度かの会話が孤独感を20%減少させたことが分かった」という――。(第5回)

※本稿は、アンデシュ・ハンセン『メンタル脳』(新潮社)の一部を再編集したものです。

他の人と連携すると幸せな気分になる理由

人類の歴史のほとんどずっと、「他の人と連帯すること」が危険だらけの世界で生きのびるために欠かせないことでした。あなたがこの文章を読んでいるということは、祖先全員が周りの人と助け合い、互いを守り合ってきたはずです。社会的な絆を結んでそれを維持した人は命をつなげる可能性が高かったので、当然その遺伝子が子孫にも受け継がれています。

何度も書いた通り、脳にとってはその人を生きのびさせ遺伝子を子孫に残すことがすべてでした。そして私たちもその遺伝子を受け継いでいます。そうでなければ存在していません。ですから他の人と連帯を感じるたびに脳が「幸せな気分」というごほうびをくれるのです。

腕を上げる人々のシルエット
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人間の肌は優しくなでられると反応する

人間の肌には、優しくなでられた時にだけ反応する受容体があります。その受容体は痛みや温度には反応せず、肌を押されても反応しませんが、軽くなでられた時には反応します。その反応が最も良いのが秒速2.5センチの速さで触れられた時で、それはまさに誰かに優しくなでられる時の速さです。

そこには何か意味があるはずです。でなければ身体にこの受容体が組み込まれるように進化したはずがありません。

肌が受け取ったシグナルをたどって脳まで行くと、その答えがわかります。肌を優しくなでられると、「脳下垂体」という脳の下部分にある内分泌腺ないぶんぴつせんで「エンドルフィン」が放出されます。エンドルフィンというのは脳内伝達物質で、痛みを和らげたり幸福感という強い感情をつくったりします。

小さい頃、ケガをしてなぐさめてもらったことがあると思います。信頼している大人に頰をなでてもらったり、優しい声で落ち着かせてもらったりしたでしょう。

するとすぐにエンドルフィンが出て痛みが和らぎ、気分が良くなったはずです。逆に、友人が悲しんでいる時や助けが必要な時に、自分もそんな風にしようと思ったことはないでしょうか。とっさに相手の腕をなでたり「ここにいるよ」「一緒にいるからね」と伝えたりしたかもしれません。