※本稿は、ソニア・リュボミアスキー『新装版 幸せがずっと続く12の行動習慣』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
「ポジティブ心理学」の研究者と話し合ってわかったこと
2001年1月、私はメキシコにある「アクマル」という、カンクンから車で2時間ほどの静かで美しいリゾート地へ旅しました。そこは暖かなそよ風が吹く場所で、「パラパ」と呼ばれるヤシ葺き屋根の小屋に6人ほどが集まりました。「ポジティブ心理学」という、当時はまだかたちになり始めたばかりの分野の研究者たちが、お互いの発見を共有し、アイデアを出し合うためです。
このアクマルで交わしたいくつかの会話は、私の仕事のかたちや方向性に大きな変化を与えるきっかけとなりました。その1つに、同僚の教授であるケン・シェルダンとデイヴィッド・シュケイドと交わした会話もあります。
私は旅の前に彼らを含む研究者たちにEメールを送り、「人々が幸福を追求するさまざまな方法を分類した論文を執筆することについて話し合いたい」と伝えていました。けれども、いざ話し合ってみると、このテーマに関する実証的な研究がほとんど存在しないことに私たちはたちまち気づいたのです。
大半の心理学者は「ずっと続く幸せなんてない」と思っていた
より幸福になるために人々がどんな方法を用いているかを、ほとんどの研究者は知りません。さらに、大半の心理学者は「ずっと続く幸せ(持続的幸福)」という概念そのものに対して悲観的だということがわかりました。
当時、学界が関心を寄せていたのは2つの発見でした。1つ目は、幸福は遺伝するもので、人の一生を通じてほとんど変化しないこと。2つ目は、人生におけるどんなポジティブな変化に対してもいずれ慣れてしまう、驚くべき能力を人は備えていることでした。そのような理論からすれば、人は「ずっと続く幸せ」を手にすることはできない、ということになります。
どんなに幸せを感じようと、それは一時的なもので、長期的に見れば、もともとの状態、いわばそれなりに満足できる状態に戻らざるをえないというわけです。