LINEは日報。既読スルーは「愛の証」
私がT子さんに会ったのは、ちょうどその頃だ。交際順調のはずのT子さんは、R介さんとの関係に悩みを抱えていた。それは、「彼がLINEに返信をくれないこと」だという。
T子さんは用事がなくても毎日1、2回、彼にLINEでメッセージを送っている。内容は、「今日、家を出たらキンモクセイの香りがしました」とか「寒くなってきたから、夕食はお鍋にしたよ」とか、他愛もない近況報告がほとんどだ。それに対して、彼は「既読スルー」で済ませることが多い。T子さんは、それが不満なのだという。「メッセージを送っても、既読になるだけで返事もくれないなんて、私のことを大事に思っていないということですよね? 私は愛されていないんじゃないでしょうか」
聞くと、何か質問をすれば必要な答えは返ってくるし、待ち合わせなどの業務連絡には返信があるという。R介さんは、もともと口数も少なく、雑談のようなメッセージに気の利いた返信をするようなタイプではないのだろう。アラフォー・アラフィフ世代の独身男性には、そういうタイプは珍しくない。
「どんなメッセージにも、こまめに返信してほしい」というのは、T子さんが勝手に相手に期待していることに過ぎない。相手がそうしないからといって、「私のことを大事に思っていない」「愛されていない」ということに結びつけるのは、T子さんの「妄想」であり、「事実」ではない。事実は、「週に一度は一緒に過ごしていること」だ。
T子さんのようにネガティブな妄想にとらわれてしまったとき、そこから脱却するための簡単なセルフワークを紹介する。
1.大きめの紙やノートを用意する。
2.今、自分が抱いている不安や不満を思いつくままに書き出す。
3.その下に、「その考えは、私を幸せにする?」と書く。
4.書き出した不安や不満を見直してみる。
もし、書き出した不安や不満が「自分を幸せにしない」妄想だと気づいたら、手放せばいい。T子さんの場合は、「LINEにこまめに返信してくれない彼は、私を大事に思っていない」という妄想を手放すことを決めた。
その上で、私がT子さんにお伝えしたのは「近況報告LINEは、日報だと思って送るべし」ということだ。会社で、上司に提出する日報に返事を求めるだろうか。彼はもちろん上司ではないが、それくらいのスタンスでいれば、返信がなくても失望することもない。日報なら、既読になるだけで十分だ。
「返信してくれないなら、送りたくない」と、こちらから連絡をするのをやめてしまうと、R介さんのようなタイプの男性とは音信不通になる可能性がある。好きな人に送る日報の役割は、『私は元気です。そして、あなたのことを気にしています』という気持ちを伝えることだ。「既読」は彼の愛の証だと受け止めて、送り続ければいい。