風俗店と違って時間制限がなく「今日の客、2時間もかかった」

取材を始めたときから心がけていたことだが、私はあくまで観察者として、路上で性を売る女性たちに接しようとしていた。彼女たちの言動を否定したり説教めいたことを言ったりしないようにと思っていた。それでも、「危ないからやめときな」と、つい口を出してしまいそうになる。

性風俗店では、時間ごとのプランで値段が異なるが、路上に立つ女性たちは、1人の相手にどれくらい時間を使うか明確には決めていない。「一通りのことが終われば終わり」という場合が多く、「今日の客、全然いかなくて2時間もかかった。倍ほしいくらいだった」とこぼすこともある。

ユズはかって基本料金を「2万円くらい」に設定していた。ところが、金額を言った途端に離れていく客が多かった。しかも、女の子の数が増えて相場は下がりぎみで、仕方なく彼女は自分の値段を少しずつ下げていった。

ホストにハマって店に行けば1回2~3万円はかかる

ある日、ユズが、財布の中に1万円札が何枚あるか数えていた。いつもより明るく機嫌もいい。「景気がよさそうだな」と話しかけると、目を細めながら、「すぐに客がついて2万(円)もらったんだよね」と答えた。それとは別に、話しかけてきた年配男性から、立ったまましゃべっただけで何千円か受け取ったという。セックスをしなくても、たまにお金をくれる顔なじみがいるらしい。「そんな客ばっかりだったらいいのに」と彼女は言う。

私にしてみれば、何もしないで金をくれる人こそ、動機が分からないだけに怖い。「そういう人って、何が目当てなんだろう?」と聞いてみたが、納得できる答えは返ってこなかった。

物事をあまり深く考えず、先を見据えないユズは常に金欠だった。「金がない」も口癖の一つだ。稼いだ金が貯まることはなかった。使ってしまうのだ。ユズはしばしばため息をついた。理由はその時々で違ったが、一番多かったのは「ソラ君に会いたい」だった。彼女が入れ込んでいるホストだ。

4歳下の22歳。写真を見せてもらうと、少年の雰囲気を多分に残した、きれいな顔立ちの男の子だった。スマホケースの裏側に、彼の黄色い名刺を大事そうに挟み込んでいた。明らかに「ハマっている」状態だった。けれど、彼がいる店に毎日行けるほどの金はない。一回行けば、最低でも2、3万円はかかる。ねだられてシャンパンのボトルでも入れれば5万円は下らない。だから、ため息がよくこぼれた。

1万円札の束を持つ男性
写真=iStock.com/liebre
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