医療費+介護費で900万円を生活費とは別に準備する

介護については、生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(2021年度)によると、介護にかかった費用は平均月額8万3000円、介護期間の平均が5年1カ月、一時的にかかった費用の平均が74万円とあるので、総額を概算すると約580万円となります。介護する場所が施設の場合は、居住費・食費・日常生活費も含んでの金額となるため平均月額12万2000円と、在宅の場合の同4万8000円に比べてグンと高くなっています。もちろん入居する施設によっても異なりますし、介護期間や要介護度によっても大きく変わりますので参考値ですが、500万円程度が一つの目安です。

医療費と介護費を合わせると1人当たりざっと800万円、今後の負担増も考慮すると1人当たりできれば900万円。これを生活費とは別に、医療・介護の費用として準備しておけると安心だと思います。

医療費と書かれた木製のブロックと電卓
写真=iStock.com/Seiya Tabuchi
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生活費を年金でまかなえるか

老後に入ってくるお金が分かり、老後にかかるお金が分かれば、その差額が準備すべき金額ということになります。ただ、ここで一つ難しい課題が浮かび上がってきます。それは、自分が何歳まで生きるか分からない、ということです。一時的にかかる費用はそれに足る額を準備すればいいのですが、日常生活費などは生きている限り必要です。そこで、継続的に支出する日常生活費が、継続的に入ってくる公的年金で賄えるのかどうか、収入と支出を突き合わせて確認していきます。

先に取り上げた家計調査(図表1)によれば、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では月の支出額が26万8508円、収入額は24万6237円となっています。その収支の差が毎月の不足額ということになります。

もし家計収支が平均値並みであれば、毎月約2万2300円の不足ということは、65歳から90歳まで25年間の不足額の累計は単純計算で約670万円となります。つまり、会社からの退職金も企業年金も全くないということなら、少なくとも夫婦2人でこれくらいの蓄えは、比較的健康に過ごせるとしても最低限必要ということになります。