人生を彩る、楽しむための費用

次に考えておくべきなのは、自己実現のための費用や一時的な出費です。これはいわば、人生を楽しむための費用です。しかしながら、これこそ恐らく最も人によって異なる部分かと思います。お金がかかる趣味を持っている人と、そうでない人とでは必要とする金額は大きく異なります。

前述の家計調査報告における65歳以上の無職世帯の支出内訳を金額ベースで見ると、「教養娯楽」の項目は夫婦世帯で1カ月で約2万1000円、単身世帯では同1万4000円となっています。勤労者世帯の教養娯楽項目の金額は世帯人数2人以上のケースで3万円程度ですから、現在と同程度で老後も趣味を楽しめる人は結構いそうです。

しかしながら、海外旅行に毎年行きたいとか、クルマを買い替えるのが好きという人であれば、その分のお金は年金だけでは賄えないでしょうから、そのための資金を準備しておく必要があります。

ピンクのスーツケースとパスポートを持つ女性
写真=iStock.com/FTiare
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医療費は100歳までの35年で300万円が目安

大江加代『新NISAとiDeCoで資産倍増 人生100年時代の新しいお金の増やし方』(日経BP)
大江加代『新NISAとiDeCoで資産倍増 人生100年時代の新しいお金の増やし方』(日経BP)

次に、老後といえば気がかりな医療や介護の費用について。いつ何時、病気になるかは誰にも分からないですし、できることなら介護のお世話にもなりたくないものの、そうなる可能性は否定できません。どうなるか分からないので、医療・介護費というのはなかなか“見える化”するのが難しい費用です。ただ、分からないと言っていても仕方がないので、現在の高齢者が実際に負担している金額を参考に見積もってみたいと思います。

医療費については、年齢が上がるにつれて増えるのはご想像の通りですが、自己負担額は現役時代に比べて大幅に少なくなります。それは、70歳以上は一定の年収以下の人であれば自己負担率が3割ではなく2割や1割に下がりますし、一定額以上の自己負担額は払い戻してもらえる高額療養費制度という仕組みがあるからです。厚生労働省が2020年度に行った調査によると、年齢階段別の1人当たり医療費の自己負担額について、65歳から100歳まで35年間分を合計すると約270万円となっています。つまり、300万円程度が一つの目安と言えます。