子供の「貢献欲求」を満たして

もうひとつ、魔法のフレーズをご紹介します。それは「助かったよ、ありがとう」です。意識して、子供に伝えるようにしてみてください。

『プレジデントFamily2023秋号』(プレジデント社)
『プレジデントFamily2023秋号』(プレジデント社)

人が伸びていくのに必要な欲求は二つあり、それは「承認欲求」と「貢献欲求」だといわれています。多くの親御さんは「褒める(例:すごいね)」「認める(例:がんばっているね)」は意識的に普段のコミュニケーションに取り入れていて、前者の「承認欲求」を満たせている子供は多いです。しかし、私は役に立てている! と思える「貢献欲求」を満たすことはなおざりにしがち。

例えば子供が料理を「手伝いたい」と言いました。そこで「まだ宿題やってないでしょ? 自分のことをやりなさい」などと言ってしまい、子供ががっくりするというパターンは多いんです。そこで「じゃあ、お豆腐を取って」など、何か一つだけでも任せて、「○○が手伝ってくれて助かったよ、ありがとう」と伝えると子供は満足するので、そのあとのこともスムーズになります。

一見遠回りをしているようですが、子供の心には「お母さんの役に立てて嬉しい」→「私はできる子だ」→「そうだやることがあった」→「宿題をやろう」と変化が起こり主体的な行動につながっていきます。

声かけを変えると自分が変わる、親が変わると子供も変わる

私たちは朝起きてから夜寝るまで、無意識にたくさんの言葉がけを自分にしています(専門用語では、「自己対話」といいます)。その言葉の数は、なんと約2万語から8万語!

普段からネガティブな発言が多い人は、もしかしたら一日に8万語も自分を責めるような声かけをしているかもしれません。そのうちの一部でもセルフペップトークに変えることで、自分自身が満たされ、子供たちにも余裕を持って接することができるようになります。

例:
「今日も叱っちゃった」→「明日は褒めよう!」
「私ってネガティブ……」→「リスク管理が得意だよね」

始めてすぐには変わらなくとも、継続していけば、必ず効果を感じられるはずです。騙されたと思って、まずは「セルフペップトーク」「ポジティブ変換」「魔法のフレーズ」を日々に取り入れてみてください。

文=土居雅美

乾 倫子(いぬい・みちこ)
認定講演スピーカー・セミナーファシリテーター

日本ぺップトーク普及協会 教育普及部副部長。香里ヌヴェール学院小学校専任教諭。共著に『やる気を引き出すペップトーク』。また、ペップトーク実践モデル小学校で講師として、児童にペップトーク授業を行っている。