夫婦同姓で世の中のほとんどの男性は困っていない

夫婦同姓で、痛みや苛立ちを受けるのは圧倒的に女性です。夫婦のほとんどが、夫の姓を選ぶのが現状だからです。

女性は改姓によって、銀行口座や公共機関などでの名義変更の手間を負うし、通称の旧姓と戸籍上の姓の二重管理といった煩わしさを強いられる。結婚や離婚などのプライベートをわざわざ公にすることにもなる。女性ばかりが大変な不利益を被っています。

他にも国会議員に立候補する際の届出書類に書く名前は、戸籍上の氏名です。選挙で有権者の方に書いてもらう名前と、議員としてポストに就くときの名前が違う。「誰、この人?」と思いますし、私自身それがいいとは思っていません。

自民党衆議院議員の野田聖子氏
撮影=小林久井

我が家の場合、夫には仕方なく野田姓になってもらっていますが、「早く別姓にしてほしい」と、言われています。

私の夫は困っている当事者ですが、夫婦同姓は、男性議員も含めて世の中のほとんどの男性は困っていない。だからその痛みや苛立ちを理解できず、法制化が進まないということです。

「家族の一体感が失われる」と反対する自民党保守層

そういった男性議員の無関心に加えて、自民党の保守層の根強い反対も、法制化が進まない大きな理由の一つです。反対している議員は、1996年の民法改正案の答申から、ずっと反対。何をやっても反対。交渉の余地がありません。

彼らが挙げる理由の多くは「家族の一体感が失われる」というものです。夫婦と子どもが同じ姓を名乗ることで、家族の絆や連帯感が生まれるという、日本に昔からある保守的な価値観からきているものですが、現在結婚件数の3組に1組の夫婦は離婚している時代です。夫婦同姓だから家族の一体感が生まれるというものでもないですよね。また、男性議員だけでなく、ほんのわずかですが、正面切って夫婦別姓に反対する女性議員もいます。その人たちによって「いや、女性たちは困っていない」というミスリードをされてしまうのは困ったことです。