生理痛で女性は1日4時間失う
損なっているのは経済面だけではありません。第一三共ヘルスケアが行なった「日本人の『痛み』実態調査」(2011年)によると、「生理痛によって、1日当たり何時間失っていると思うか」という質問に対して、女性全体の平均では230分――つまり、約4時間を失っていると感じていることがわかりました。
さらに、「生理痛がほぼ毎月ある」人では平均311分、「生理痛がひどいと思う」人では平均345分と、生理痛の程度が強いほど、損失していると感じる時間が長くなる傾向が見られたのです。生理痛によって、女性は最大で1日6時間もの損失を被っているということです。
先にも述べた通り、日本の労働人口の4割が女性です。日本の経済の半分を支える女性たちの大半が、生理痛や大量出血を抱えているために、日本社会の生産性を大きく損失していることが、数字に如実に表れています。
逆にいえば、女性の生理を健全に保つための社会的なサポート体制を整えたり、企業内の環境整備と男女双方のリテラシー教育を行なうことは、年間7000億近いリターンが得られる投資になるとも考えられます。
1962年中国生まれ。漢方専門桑楡堂薬局代表。北京中医学院(現・北京中医薬大学)医学部中医学科卒業後、同大学漢方専門外来で婦人科、小児科の医師として勤務。同時にWHO国際伝統医学協力センター(北京)の中医学基礎講師を務める。89年に来日。92年東京学芸大学大学院生理・心理学修士取得。現在は漢方相談の傍ら、中医学の普及のために日本国内、北京の母校で講義を行なう。著書に『わかる中医学入門』(燎原書店)、『生理で診断 体質改善法』(家の光協会)、『春夏秋冬 自分で不調を治す 漢方的183のアイディア』(オレンジページムック)、共著に『問診のすすめ 中医診断力を高める』(東洋学術出版社)などがある。