「人間関係がうまくいかないのは容姿のせいだ」

大人の愛着障害に関しては研究も少なく、医学的には明確な病気としてはあつかわれていませんが、実際の診療では、心の問題の核心に愛着障害があることが非常に多いと思います。

そして身体醜形症を発症する人の多くもまた、この愛着の傷を抱えています。

「人間関係がうまくいかないのは自分の容姿のせいだ」と愛着の傷を外見の問題に置き換え、自分を嫌っている可能性があります。

「美しくなりたい」という強迫観念にさいなまれてしまう

中嶋英雄『自分の見た目が許せない人への処方箋』(小学館)
中嶋英雄『自分の見た目が許せない人への処方箋』(小学館)

愛着障害タイプは、無条件に愛された記憶(体験)がないため、つねに「誰かに必要とされる自分でいなければ」という強迫観念にさいなまれます。生きるには条件が必要だと感じ、「もっと勉強ができるようになりたい」「偉くなりたい」「美しくなりたい」というような動機づけを得て、その願望自体に執拗しつようにとらわれるようになるのです。

さらに、その願望がファンタジー(妄想)の世界を彷徨うようになると、統合失調症へもつながります。

身体醜形症や美容整形依存は、このスペクトラム(=境界が曖昧な連続体)のどこかに位置し、「もっと際限なく美しくなりたい」という、未熟で傷ついた自己愛によるものと考えることもできます。

中嶋 英雄(なかじま・ひでお)
精神科医、形成外科医

1973年慶應義塾大学医学部卒業。1988~2010年慶應義塾大学医学部形成外科学同助教授、准教授を経て、精神科に転科し群馬病院勤務。現在は美容整心メンタル科を掲げ、身体醜形症、不安症などの神経症、整形依存、パーソナリティ障害の治療を行っている。著書に『ほんとうに美しくなるための医学』(アートデイズ出版)。