結婚は離婚と配偶者に先立たれるリスクを抱えること
私たちは、自分の状況は人よりいいと考える傾向があるし、自分の選択のもたらす運命は自分でコントロールできると思いがちだ。しかし、自分の予想するところと、実際に結婚がどのように終わるかには、残念ながら相関関係がない(※4)。
人は結婚したままでいたいと望み、いつまでも幸せに暮らしたいと思っている。だが、結婚しているということは、その定義から考えても、自ら離婚する、あるいは配偶者に先立たれるという「リスク・グループ」に入ることになるわけで、そのことを常に頭に入れておかねばならない。
とはいえ、私は先ほどの図で、何かを「ごまかしている」という印象を読者の皆さんに与えたいとは思わない。これらの驚くべき調査結果の背後に何があるのか理解するため、続く部分では、結婚というシナリオをきちんと分類し、それぞれのグループにどんな違いがあるか、見極めていきたい。
データが示す「結婚がもたらす幸せ」の知られざる真実
先述の調査結果にさらに最新のデータも付け加えたうえで、正確な分析をおこなうために、結婚に関連して分類した4つのグループ、つまり、①結婚している人たち、②未婚の人たち、③別離・離婚した人たち、④配偶者に先立たれた人たちのそれぞれの孤独と幸福について、個別に検証してみた。
教育、収入、健康状態、宗教、社交性、それに居住国など、多様な、そして相互に関連しあう要因も考慮に入れた。その結果を、65歳以上の年齢層について検証し、75歳以上の年齢層については、さらに詳細な分析をおこなった。
これらのデータを分析した結果、結婚している人たちや一度も結婚したことのない人たちと比べると、別離・離婚した人たち、そして、配偶者に先立たれた人たちが最も幸福感が低いうえに、最も孤独を感じていた。誰かと同居しているシングルの人たちを除外して比較した場合も同様だった。
0〜10の尺度で比較した場合、今も結婚している男性に比べて、結婚したことのない男性は0.45ポイント、離婚した男性は0.5ポイント強く孤独を感じており、配偶者に先立たれた男性は0.8ポイント強く孤独を感じていた。女性の場合、結婚している女性と比べて、未婚の女性は0.35ポイント、離婚した女性は0.4ポイント、配偶者に先立たれた女性は0.6ポイント、強く孤独を感じていた。
幸福感についての調査でも、似たような結果が出た。離婚した人たちと配偶者に先立たれた人たちが最も幸福感が低く、前者は結婚している人たちに比べて、0.8ポイント、後者は0.6ポイント、幸福感が低かった(この場合は、離婚した女性が最も幸福感が少なかった)。一方、結婚したことのない人たちのグループの幸福感の低さは0.4〜0.5ポイントだった。