ステップ3:代案を提案する

最後に、代案を提案しましょう。たとえば「今すぐは取り掛かれないのですが、来週でしたら可能です。いかがでしょうか」など、譲歩できる範囲で代案を提案します。それが難しい場合も、「今回は難しいですが、今度お手伝いできることがあったらぜひ声をかけてください」などと伝えます。

ここであまり、「仕事を引き受けたいアピール」をしてしまうと、自分の首を絞めることになるので気を付ける必要はありますが、最後にちょっとしたやる気を見せることで、相手の失望感を和らげることができますし、「冷たい人だ」と思われることも避けられます。対面で回答する自信がなければ、メールやチャットで送ってもいいと思います。

この3ステップによる構成で、あらかじめ断り方のテンプレートをいくつか用意しておくとよいでしょう。

「断る=絶対やらない」ではない

仕事を頼まれたときの返し方は、「断るか」「引き受けるか」の二択ではありません。「どちらかを選んで答えなくては」と思うと気が重くなり、「引き受けてしまった方が気が楽だ」となってしまうかもしれませんが、二択ではないと思えば断ることのハードルも下がるのではないでしょうか。

「断る=まったくやらない」ということではないのです。自分の中で譲歩できる範囲がいくらかあると思うので「1週間後ならできます」「最初だけやりますけれど、あとは他の方にお願いしたいです」など、譲歩できる範囲、自分ができる範囲を見極めたうえで回答すればよいのです。

ただ、それを相手に頼まれてすぐに、その場で判断して回答するのは難しいでしょう。だからこそ、いったん持ち帰って猶予を作り、考えたうえで回答するのです。頼んだ側も、「この人は真面目に考えてくれている」「前向きに取り組もうとしている」という印象を持ってくれるでしょう。

構成=池田純子

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。