アイドルから事務所社長へ、滝沢秀明とは何者なのか

ただ、滝沢自身は大成功したスターというわけではない。たしかに10代の頃の勢いはすごかった。ジャニーズアイドル屈指の顔面偏差値の高さとハングリーさでジャニーズJr.のリーダーとなり、それまではあまり知られていなかったジュニア人気を盛り上げた。

若手俳優としても「木曜の怪談」「魔女の条件」などの連続ドラマに出演してポスト・キムタクだと注目され、瞬く間に主演クラスに。22歳で大河ドラマの最年少主演まで果たしたが、それ以降、大人の俳優として例えば木村拓哉の「HERO」や松本潤の「99.9%」のように映画化もされるようなヒットシリーズに恵まれたわけではなかった。

歌手活動でも、タッキー&翼には「夢物語」などのヒットソングがあるものの、嵐やSMAPのようなミリオンセラーまではない。インタビューではしばしば裏方志望であることを語っていた。演出家としてはアイデアマンであり、交渉上手。松竹と組んで「滝沢歌舞伎」という主演舞台を作り、客席がガラガラの日もあった「滝沢演舞場」の時代から10年かけて成功させた。

そして、完全に裏方に回った2019年からはジュニアの育成に本腰を入れた。2020年にはSnow ManとSixTONESを同時にデビューさせ、両グループのファンが競ってCDを買いたくなるような仕掛けをした。ファン心理を見抜くプロデューサーとしての手腕もたしかだ。

ジャニーズというしがらみから抜け出した現在の勢い

そうして裏方として本領発揮していた最中、2022年、電撃的にジャニーズ事務所を辞めてしまったわけだが、その決断に至るまでには藤島社長の下でよほどのことがあったはず。だとすれば、そんな大組織かつオーナー企業のしがらみから抜け出したタッキーが、今さら別のしがらみに足を突っ込もうとするだろうか。

滝沢はTOBEのYouTubeとは別に、Twitterのスペース(音声ライブ配信)やTikTokライブでしばしばファンに直接語りかけている。そこでの発言で、三宅健や平野紫耀、神宮寺勇太をジャニーズ在籍時から引き抜いたわけではなく、あくまでそれぞれが退所した後に集まって合意したという流れだったこと、TOBEは大きい会社にするつもりはなく自分の目の届く範囲でやっていくということ、音楽活動は当面CDではなく、デジタル配信で展開することが明かされた。