「ホテルに行こう」と誘われた
思えば、私がセクハラと言ってしかるべきことを体験したのは、まだ「セクハラ」という言葉がなかった時代のこと。
コピーライターの養成所に通っていた頃、講師をやっていた大手広告代理店勤務の人と二人で飲みに行ったら、
「ホテルに行こう」
と誘われたのです。今はその瞬間に「アウト!」という時代ですが、当時の私がまず思ったのは、「へー、私なんかを誘うんだ……」ということでした。さすがに「ありがたい」とまでは思いませんでしたが、「どうもどうも。恐れ入ります」みたいな感じで、全然腹が立ったりはしなかった。そうして、
「一応、講師やってる立場で誘ったりしていいわけ?」
「こういうのに乗ってくる女の子もいるんだろうなあ」
という興味の方が勝ってしまい、
「世の中ってこういうふうに回っているのかー。面白いなあ」
と学ばせてもらったものです(一応お断りしておきますが、もちろんついて行かなかったですよ。まったく好みのタイプではありませんでしたし)。
力を持っている人は誰かを口説いてはいけない
時は流れ、そんな牧歌的な時代は遠い昔になりました。オペラ歌手のプラシド・ドミンゴがセクハラで訴えられたり、息をするように女性を口説くスペインやイタリアの男性は路頭に迷う時代になっています。
知り合いの男性は、部下の女性と二人で食事をする必要がある時は、
「もう一人か二人、誰か誘ってください」
と気をつけているとか。パワーバランスが釣り合う男女でないとサシでの食事をするのは難しい世の中になってしまったのかもしれませんね。
ただ、はっきりと一つ言えることがあります。
「力を持っている人は誰かを口説いてはいけない」
今や、これを死守しなければ、口説いた方は社会から抹殺されるようになりました。一回でも手を出したら終わり。二者の間で「自分が優位にいる」「自分の方が権力がある」と思ったら口説いてはいけないのです。
口説いたわけではないですが、最近、気をつけなければいけないと思ったことが一つ。日大の廊下にカッコいい男性ばかり立っていることがあって思わず、
「何!? イケメンばっかりどうしたんですか!?」
と口走ってしまったのです。あるスポーツ部の集いがあるということだったのですが、今の私の立場で「イケメン」などと学内で言っちゃまずかろうと、ハッとしました。口のきき方を今後は気をつけなければいけないなと反省した出来事でした。