スマートフォンがライフスタイルを変えた

近年は、スマートフォンの存在が、私たちのライフスタイルを大きく変えました。

2017年に行った、中高一貫校の生徒約2000名を対象とした私達の調査では、スマートフォンを小学生の時から持っていたと答えたのは全体の1割以下で、ほとんどが中学生になってから。その所持率は95%程度で、高校生になると98%くらいでした。そして中高とも女子の方がやや高い所持率でした。夜間使用率については、中学生が平均76%前後だったのに対し、高校生は94%と高く、中高ともやはり女子が高い傾向でした。

【図表1】スマートフォン夜間使用率
小林正子『子どもの異変は「成長曲線」でわかる』(小学館新書)より
【図表2】スマートフォン夜間使用時間
小林正子『子どもの異変は「成長曲線」でわかる』(小学館新書)より
スマートフォンの夜間の使用時間を、短時間(1時間以内)と長時間(1時間以上)に分類すると、1時間以上は男女とも高校生で多く、3割強でした。
睡眠時間は、中1から高2までは、スマートフォンの夜間使用が短い方が長い傾向が見られました。睡眠時間は中学生で平均7時間半程度、高校生で6時間半程度でした。高3では差が見られませんでしたが、これは受験勉強などの影響と考えられます。

*いずれも、東京都内私立中高一貫校に2017年5月に在籍した中学1年生から高校3年生の男女1948名を対象に調査。

しかしその後、スマートフォンの所持率はあっという間に増加して、現在では小学生でもかなりの子どもが所持していると考えられます。

今や私達の生活になくてはならない電子機器、特にスマートフォンですが、夜間使用が長時間に及ぶと、その強い光が子どもの脳に大きな影響を及ぼします。日本の子どもの身長が近年伸びなくなってきたのは、思春期後半に足が伸びなくなったせいであり、これはデータから明らかです。こうしたスマートフォンをはじめとする電子機器の使用について、私達は今後の生活全般にわたって、もっと真剣に考えなければなりません。

睡眠の質が成長を左右する

スマートフォンやゲーム機を子どもが夜遅くまで使うと、睡眠時間が減るだけでなく、電子機器が発する強い光で脳が覚醒し、睡眠の質が悪くなってしまいます。深い睡眠が得られなければ、成長ホルモンは分泌されませんから、当然身長も伸びません。つまり身長が伸びる時期に、スマートフォンやゲーム機を夜遅くまでいじる生活をしていると、身長の伸びが妨げられるのです。

また、よく眠れなければ朝起きるのが遅くなり、そうすると朝食を摂らない。朝食を摂らなければ、学校に行っても集中できず、頭痛やめまいなど不定愁訴を訴えるなど、身長だけではない、さまざまな問題を引き起こします。

スマートフォンを与えるときは、夜は使わない、1日30分あるいは1時間だけなど、使用時間のルールを決めることが大切です。使い方を間違えると、いろいろよくないことにつながり、身長も伸びなくなるということも、子ども達にぜひ伝えてほしいと思います。

中高生は12時までに、小学生は9時には寝る

とにかく身長を伸ばすには、ぐっすり眠って成長ホルモンをしっかり分泌させることが絶対条件です。日中はよく光を浴び、夜はできるだけ強い光を避けるようにしましょう。

家庭では夜は照明を煌々こうこうとつけてテレビはつけっぱなしなどという環境にしないで、落ち着いた環境の下、できるだけ余分な光を浴びないようにすることが発育にはプラスになるのです。

成長ホルモンは眠ってから1時間後、それも夜中の12時~1時頃に最も分泌されますので、中学生や高校生でも、遅くても12時前には寝るようにしたいものです。

小学生は、そもそも9~10時間の睡眠をとらなければ、からだの機能は十分に発達しません。9時頃には寝かせるのが理想です。