「女性の代表」扱いはしんどい
「女性ならではの視点」を期待されるとき、女性は知らず知らずのうちに個人ではなく「女性の代表」として発言したりアイデアを提供したりすることを求められます。これでは荷が重いと感じるのも当然です。
せめて「プロジェクトに女性が少ないことに危機感を持って招集したが、女性を代表する必要はないので個人の意見を積極的に言ってほしい」などというフォローがあるとよいと思います。「代表者扱い」の重圧や自身の経験を精査する手間から離れたところでなら、個々の女性は提供できる、また提供すべき視点や経験をたくさん持っているはずですから。
抜け出すための考え方
「女性ならではの視点」を求めることは、個々の女性に「女性の代表として語る」という不当な要求を課すことになる場合が少なくありません。男性にそれが求められていないのですから、女性にも個人としての意見を求めるべきであり、そのうえで何が女性の経験への配慮になるかを吟味していくべきでしょう。
もっと知りたい関連用語
【マジョリティ/マイノリティ】
多数派/少数派と訳されることもあるため、単純に数の大小の問題だと理解されることが多いのですが、社会が「標準」としている属性かそうでないかという観点からの区別であると考えるほうが適切です。社会構造によってその属性の中での権限や富の多さ/少なさが決まっているという点を理解してもらうために、私は大学の授業などでは「構造的強者/構造的弱者」と説明したりもします。男性がマジョリティ、女性がマイノリティと言いうるのも、この観点によるものです。
もっと深まる参考文献
ダイアン・グッドマン著、出口真紀子監訳、田辺希久子訳、2017『真のダイバーシティをめざして―特権に無自覚なマジョリティのための社会的公正教育』上智大学出版
1982年神奈川県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻(相関社会科学コース)博士課程単位取得退学。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻助教を経て、現在、早稲田大学文学学術院准教授。専門は、社会学、クィア・スタディーズ。著書に『「ゲイコミュニティ」の社会学』『LGBTを読みとくークィア・スタディーズ入門』『10代から知っておきたい あなたを閉じこめる「ずるい言葉」』『10代から知っておきたい 女性を閉じこめる「ずるい言葉」』。(プロフィール写真:島崎信一)