自由になって「あんなものクソだった」と言おう

今、あちこちで上がっている脱会者の声や2世の声に、お願いだから耳を貸してほしい。

セキュリティ対策とか国葬とかそうした議論に割くリソースと同じかそれ以上に、新宗教の問題にも取り組んでほしい。今日もどこかの家の子どもが、「信仰」の名の下に、親から暴言や暴力を受け、経済的基盤を失い、友人も失い、孤独に苛まれているかもしれないことに、思いを馳せてほしい。

わたしにも具体的で明確な殺意があった。もちろん親に好かれたい、愛されたいという気持ちはあったが、それと同じくらい、親に死んでほしい、なんなら親をこの手で殺したいと思った。教祖や協力者にも、やはり殺意がよぎった。ただ、わたしは人を殺すことは経済的な後ろ盾や社会的な地位を失うことだと理解していた。だからわたしは我慢した。お金と地位のために、我慢しただけだ。

「人殺しの宗教2世」になりたくない人のために

最後に、「人殺しの宗教2世」になりたくない、という若い人が、もしこれを読んでいたら、その人に呼びかけたい。

横道誠(編)『みんなの宗教2世問題』(晶文社)
横道誠(編)『みんなの宗教2世問題』(晶文社)

どんなに時間をかけてでも、逃げる備えをしてほしい。「逃げることなど無理だ」と、諦めないでほしい。実家を出て、家族や信者以外の人と話をして、友だちを作ってほしい。友だちがいないから相談ができない、ということはない。相談をすることから友だちになることだってあるし、カウンセリングでも、弁護士でも、NPOでもいい。もがいてもがいて、いずれ誰かに「あの時つらかった」と言えることを目指して、生きてほしい。

信仰以外の考えを頭に入れ、あんなものはクソだったと言えるようになろう。自分の人生を少しでもマシにすることに集中しよう。自由と権利の行使に怯えず、豊かな生を全うしよう。

そして神無き世界で、誇りを持って、それぞれの静かな死を迎えよう。わたしたちは、あの世で再会することはない。だが、それでよい。祈らねば断られる「天国」など、こちらから願い下げなのだから。

(初出2022年7月15日https://note.com/chuck_abril17/

紫藤 春香(しとう・はるか)
文筆家

寄稿先に「図書新聞」など。朝日新聞社「かがみよかがみ」(WEBマガジン)の山崎ナオコーラ賞大賞受賞。noteで宗教2世として、また複数愛者(ポリアモリー)としても発信中