緊張を緩和する「話し方ルーティン」を取り入れる

人前での緊張を克服して成果を上げるためには、話し方の基本的な体の使い方を学び再現する方法があります。ただ、話し方は、生活習慣によるところが大きいため、緊張を緩和して自分の理想とする話し方を習慣化するには、ある程度練習が必要です。

個人差はあると思いますが目安として、ロンドン大学のフィリッパ・ラリー博士らの研究によると、新習慣が身に付くまでの平均時間は、66日だと言われています。皆さんは、仕事で安定した成果を出したいときに、決まった所作・動作を繰り返す「ルーティン」を取り入れることがあると思います。話し方の改善も「ルーティン」を取り入れて、少しずつ習慣を変えていくと効果的です。今回は、ご自宅や職場で取り入れやすい簡単なルーティンをご紹介します。

話し方ルーティン
① 姿勢を整える
② 腹式呼吸を意識する
③ 笑顔を意識する
④ 第一声は山なり

では、順番に解説します。

安定的な力を発揮できる4つの習慣

① 姿勢を整える

まず、背筋を伸ばして姿勢を整えます。自信がないとうつむきがちになってしまいますが、うつむきがちになると、暗い印象、やる気が無いと見られてしまいます。

また、前傾姿勢になると喉が閉じてしまい、声が出にくくなります。

緊張すると首や肩に力が入り過ぎていて、声が出にくくなりますので、首や肩を回して軽くほぐして、力みを取りましょう。喉の力みは大きなあくびをすると力が抜けます。

② 腹式呼吸を意識する

普段は、胸式呼吸という浅い呼吸をしている方がほとんどですが、人前で話すときの緊張緩和策として「腹式呼吸」を使えるように日頃から練習しておくといいです。「腹式呼吸」を使うと深い息を吸えます。深い息は医学的に副交感神経が優位になりリラックス効果をもたらします。また、声が小さいのは、息の量が不足しているからです。「腹式呼吸」で息の量を増やして声量を増やせば小さい声を改善できます。声が震える、上ずってしまう場合には、お腹に力を込めて話すことで安定します。

腹式呼吸に慣れるための練習法です。

1・口から大きく息を吐き出し、お腹をへこませる
2・鼻から大きく息を吸ってお腹を膨らませる
3・口から長い息を吐きながらお腹をへこませる

これを何回か繰り返します。

実際に話すときには、2の状態でお腹に力を入れて話し始めて、息が続かなくなったら鼻呼吸をします。

③ 笑顔

緊張を見せないようにしたいのであれば表情を整えることも大事です。無理に笑おうとすると、ひきつってしまいますが、表情筋を鍛えることで緊張しても微笑みを維持できるようになります。ぜひ日頃からルーティンに笑顔を取り入れ表情筋を鍛えておきましょう。また、笑顔で話すと、声が明るくなるのでおすすめです。

④ 第一声は山なり

①~③で体と表情をセットしたら声を出します。

普段、リラックスした状態で会話をしているときには、山なりの自然な抑揚がついています。しかし、緊張すると、つい独り言のようになってしまいがちです。そこで、人前でも相手にしっかり言葉が届くように話す習慣をつけるため、第一声を相手の胸元に向けて山なりに届けるイメージで発声します。

ご自宅で練習するときには、誰かと話す想定をして、鏡の前で姿勢と表情を確認しながら声を出してみましょう。職場では、ミーティングの冒頭に、毎回体と表情とセットをしてから相手の胸に山なりに届けるイメージで「では、ミーティングはじめます」「よろしくおねがいします」など、第一声を出してみましょう。大切なことは毎日楽しみながら取り組むことです。まずは、緊張しない場面で、ルーティンを取り入れて話し方を整えていきましょう。

この話し方ルーティンは、緊張しそうな場面の直前にやっていただいても効果がありますのでお試しください。緊張の原因や対策を知っておけば、いざというときに慌てません。どうぞあらゆる場面で緊張に負けず、実力を発揮していきましょう。

阿隅 和美(あすみ・かずみ)
WACHIKAコミュニケーションズ代表

青山学院大学経営学部卒業。中部日本放送アナウンサーを経て、NHK衛星放送キャスターとして、株式市況、世界のトップニュースを10年担当。20年にわたり、スポーツ、経済、情報番組に関わる。アナウンサー名は瓶子和美。現在は、TV現場で培った技術を活かし、ビジネス現場でコミュニケーション力を発揮し、成果を出す人材を育成する研修、講座、講演を行っている他、経営層・管理職、エグゼクティブリーダー向けプレゼン・スピーチのパーソナルトレーニングやコンサルティングなどを実施している。著書に『心をつかみ思わず聴きたくなる話のつくり方』(日本能率協会マネジメントセンター)、『仕事ができる人の話し方』(青春出版社)があり台湾でも翻訳されている。ホームページ