直観に対抗するには「ヤバい直観」を得るしかない

では、そんな「心のクセ」に対抗するには、どうすれば良いのでしょうか?

月並みな結論を言えば、冷静に、フラットな気持ちで情報を収集して、客観的に判断することです。

すなわち、都合の良い情報だけを見るのではなく、都合の悪い情報にも目をつぶらずに、しっかり対峙たいじすることです。

でも、それが簡単にできれば苦労しませんよね。

実は、(安愚楽牧場の情報をリサーチしていた)当時の私は、自身が、都合の悪い情報から目を背けていたことは、薄々と分かってはいました。しかし、分かってはいても、すでに和牛オーナー投資に前のめりだった私は、安愚楽牧場への投資を正当化するため、どうしても目を背けてしまうのでした。

それくらい、直観での魅了は抗いがたいものでして、そんな前のめりな状態で、都合の悪い情報と対峙することは、本能に抗うことであると言っても過言ではありません。

なので、直観には直観で対抗するしかありません。

それはすなわち、これは都合の悪い情報も見ておかねばマズいかも……と思えるくらいに「これはヤバいとの直観」を得ることです。

特典がドンドン豪華になってきたことに“ヤバいとの直観”

私の場合、安愚楽牧場に投資してから数年経った頃、幸い、「これはヤバいとの直観」を得ることができました。

それは、新規(継続)契約特典がドンドン豪華になってきたことでした。

特典が豪華になることは嬉しいのですが、直観でヤバいと思ったのが、メロンやギフトカード、演歌歌手のコンサートチケットなど、お肉とは関係ない特典が増えてきたことでした。

これはどう考えても、牧場側にとっては大きな負担です。

お肉以外の特典がドンドン出てきたことに、そこまでして(豪華な特典で釣ってまで)、新たな契約を取らないと、また、今の契約をつなぎ留めないといけないのか、そんなに切羽詰まった状況なのかと、急に不安になってきたのでした。

そう思い始めると、居ても立っても居られませんでした。

そして、これは「都合の悪い情報」も見ておかねばマズいと思い、おのずと、それまで目を背けていた都合の悪い情報も、しっかり確認するようになったのでした。

すると、「口蹄疫の隠蔽いんぺい工作」「管理上の法令違反」等といったネガティブな情報(事実)が次から次へと出てくるわで、さらには「自転車操業の疑い」についても、かなり信憑性の高い情報が出回っているのでした(後日、自転車操業も事実であると判明)。

そして、これまで目を背けていた、それらネガティブな情報の圧倒的な質・量と対峙した結果、さすがにこれはダメだと思い、契約更新はせず、全資金を引き揚げました。

そしてその後すぐ、安愚楽牧場は破綻し、幸いにも、ギリギリのところで助かったのでした。

もし、都合の悪い情報に目をつむり続けていたら、そのまま契約は続けており、大きな損害を被ったことでしょう。