拷問や強姦を行うロシア兵はどこから来たのか

しかし、無差別攻撃、略奪、拷問、強姦ごうかんという現代国家の軍隊かと思えるような蛮行が明るみに出るロシア兵とは何なのだろうか。よほど質の悪い兵士が前線に来ているとしか思えない。

たしかにロシア正規軍の、とくにモスクワから来た部隊にはほとんど死傷者は出ていない。辺境の少数民族や所得の低い地方出身者の志願兵を募り、編成した部隊が前線に送られていると聞く。生活が苦しく、やむにやまれず志願したような兵士たちだ。ロシア陸軍は600〜800名からなる「大隊戦術群」という単位で動いているが、略奪に関しては指揮官の考え方も大きいだろう。報告される事例の数を聞く限り、目標を制圧してしまえば、あとは大目に見ているケースが多いように思われる。

もっともロシア軍の戦場での残虐行為や略奪は今に始まったことではなく、第二次世界大戦末期の満州侵攻を見てもよくわかる。旧ソ連の時代から、民間人居住地に攻め込んだ場合は原則「やりたい放題」の文化なのだ。

キーウ周辺都市のブチャなどでは、後ろ手に縛られて頭を撃たれた遺体、焼かれた遺体が見つかっている。殺してからわざわざ焼いているのだから、何かを隠ぺいしようとしたことは想像できる。隠ぺいを目的としたのなら、ロシア自身が何をしたのかを理解しているから隠しているのだ。

非道な行為の責任はプーチンにある

スマートフォンの普及や兵士の質を問題にしたが、この戦争を始めたこと自体が「国際法違反」であり、指令したのはプーチン大統領である。個人的には、立証などしなくても戦争を仕掛けること自体が犯罪だと思っている。残虐行為が仮に末端の兵士の暴走であったとしても、市民を標的に攻撃する非道な戦いの大ボスがプーチンであることは、揺るがない事実として確認しておきたい。

この戦争は、どういう形で終わるのか。まったく先が見通せないが、はっきりしているのは、プーチンの勝利で終わらせるわけにはいかないことだ。

強権独裁主義の国家が武力をもって押し通したとき、世界がずるずる追認してしまうとわかれば、地球上のあらゆる紛争地域の独裁者たちは、お墨付きをもらったようなものになる。どんな手を使っても勝ちを取りに行き、紛争は世界規模で激化してしまうだろう。

ここが崩れた場合に、言論の自由、移動の自由など、あらゆる個人の権利が制限される世の中がやってくる。武力によって利得を得ようとする国家がやったもの勝ちで利益を得れば、その前では個人の権利などなんら尊重に値するものではなくなる。独裁者の弱肉強食の論理だけで、人類社会の秩序が踏みにじられていくのだ。