今日来て、やっぱり良かった

精神科医は私より10歳くらい年上とおぼしき男性でした。

普通の内科のような診察室で、カルテを見ながら医師は私に「どうされました?」と優しくたずねてくれました。

私はせきを切ったようにしゃべり出しました

「4月に子どもが小学生になって、とにかく本当に大変でした。入学はおめでたいことだから喜びに浸りたいのに、ずっと緊張してピリピリしてしまって。子どもが一番大変なんだからそれをサポートしたいのに、家族の中で私が一番テンパってしまって、家族も私に対して『落ち着きなよ』みたいな感じだから、1人で孤独を感じてました。親がやらなきゃいけない新しいこともたくさんあって、こんなに大変だと思ってなくて……。とにかく大変で、大変すぎて、気が狂うかもしれないって思うほどでした。だから予約したんですが、今はスッカリ大丈夫になっちゃって、すみません」

そんなとりとめのない話を、医師は「ああ、うんうん」「それは大変だ」「そうなんですね」と静かに相づちを打って聞いてくれて、「ああ、予約して今日来て、やっぱり良かったなあ」とホッとしました。

「私めちゃくちゃ大変だったけど乗り越えられました」という話を、こんなふうに初めて会った人に聞いてもらえると、大変だった時の思いがちゃんと消化されていく感じがありました。

「大丈夫そうだったら飲まなくていいけど、一応、よく眠れるように、睡眠の薬とか出しておきますか?」と聞かれ「うーん」と落ち着いて最近の自分の生活を振り返ってみて、いらないなと分かり、「いらなそうです」と答えました。「分かりました。じゃあ今日は処方はありません。またつらくなったら話しにきてくださいね」と言われて診察は終わりました。

こうやって「家族や友人ではない関係の安心できる人と一緒に自分のことを振り返ってみる」という、普段はできないことのための時間をとる、というのも、自分自身への大きなねぎらいになります。自分で自分をねぎらって、やっと、子どもや家族、周囲の人に優しくできる余裕が生まれます。

静かに相づちを打って聞いてくれる医師
イラスト=田房永子

みんなスマートにこなしているように見えるけど…

周りの保護者を見ると、みんな普通のこととして、サッパリとスマートに、なんともなしにこなしているように見えます。だから自分もそうふるまわなきゃ! ということに必死になってしまって、案外同じ立場の人に相談するっていう機会がなかったりする。

でも落ち着いてから「新1年生の保護者大変すぎるんだけど」って話してみると、みんな「ほんと毎日ギリギリだよ!」って話してくれるからみんな一緒じゃん‼ って思いました。

なので、新1年生の保護者になる人には、「『ヤバい!』と思ったら、話を聞いてもらえるところを予約したほうがいいよ」と言っています。

今年の春は、第2子の息子が小学生になります。小学生の保護者はすっかりやり慣れてはいるけど、5月ごろ行けるように精神科かカウンセリングを予約するつもりです!

田房 永子(たぶさ・えいこ)
漫画家

1978年東京都生まれ。2001年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞(青林工藝舎)。母からの過干渉に悩み、その確執と葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)を2012年に刊行、ベストセラーとなる。ほかの主な著書に『キレる私をやめたい』(竹書房)、『お母さんみたいな母親にはなりたくないのに』(河出書房新社)、『しんどい母から逃げる!!』(小学館)などがある。