親にとっても、子どもの小学校入学は大きな変化だ。漫画家の田房永子さんは「私は上の娘が小学校に入学する時、緊張で精神的にも参ってしまったが、メンタルクリニックを受診して話を聞いてもらうことで救われた。子どもの小学校入学を控えてプレッシャーを感じている人には、ぜひ一人で抱え込まず、周りを頼ってほしい」という――。
満開の桜と校舎
写真=iStock.com/7maru
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テンパりまくった娘の小学校入学

新1年生の保護者になる人へ、この時期になると呼びかけていることがあります。

「『小学生の保護者になる』という初体験によって、キャパオーバーをちょっとでも感じたら、すぐにメンタルクリニック(精神科)や心療内科、カウンセリング、セラピー、占い、など『話を聞いてくれるところ』を予約しとこう!」ってことです。

私は第1子の娘が小学校に入学した5年前の4月、入学式の数日後には「これはマズい、自分がぶっ壊れてしまう……」と感じ、メンタルクリニックに行こうと思いました。

20代の頃、心療内科を舞台にしたドラマの影響などもあって、私の周りでは「ストレスを感じ日常生活にも影響が出てきたら、心療内科に行って薬をもらう」という人が結構いました。私も気疲れしてしまったり睡眠がうまくとれなくなってしまった時は、内科や歯科に行くのと同じようにメンタルクリニックを受診していました。

個人的に、心療内科よりも「精神科」と表記されてるクリニックを選んでいます。家から遠くても、受診してみたいと感じるメンタルクリニックに行っていました。

5年前の娘の入学時は、わざわざ遠くに行く時間もなかったので、なるべく近くで選ぶことにして、経験上、個人のクリニックだと医師との相性の当たり外れの差が結構あったりするので、医師が複数在籍している大きな病院の精神科を予約することにしました。

今思えば、保育園卒園に関する保護者の仕事もたくさんあっし、当時1歳になっていた第2子の保育園入園も重なっていたため、3月の時点でキャパオーバーの警報音は鳴り始めていました。

「小学生の保護者」になるにあたって当時の私が最大のプレッシャーを感じていたのは、「保育園と違って欠席が気楽にできない」ということでした。今となったらどうしてそこまで心配だったのか分からないですが、保育園は親の仕事が休みになったら子どもも休みにできるし、「風が吹いたら遅刻して雨が降ったらお休みで」でおなじみのハメハメハ大王並みの気楽さがあります。

だけど小学校はそんな「今日はママ、お仕事休みになったから東京タワー行くかあ!」みたいなことをしたら、子どもが次の日算数が分からなくなって困ってしまう。

これからはそんな「気楽さ」は許されない生活が始まるのだと思うと、心がピーンと緊張する毎日でした。

「学校は楽しいです!」の宣言

そんなふうに迎えた入学式も、私にとっては強烈なインパクトがありました。

別に特別にすごい入学式というわけではなく、公立小学校の入学式として至ってオーソドックスな、新入生が入場して国歌斉唱して、校長の挨拶があって……という、私自身も慣れ親しんだプログラムです。児童による「1年生歓迎」の出し物で高学年の1人が壇上に登場し、極上の笑顔と大きな声で呼びかけました。

「1年生のみなさん! 学校は、楽しいです‼」

唐突な宣言に圧倒されました。

今なら、新入生に向けての「楽しいですよ!(安心してください!)」というメッセージだと分かります。でも異常なほどナーバス最前線だった私は「楽しいんだから楽しい以外ない、以上!」みたいな強さを感じ、「『楽しいと思おう!』の圧がスゲエ……!!」と勝手におののいてしまいました。

さらに始まった、児童による合奏。今の私なら「すご~い すてき~ がんばったねえ」と思うけど、その時は「保育園のお遊戯はグッダグダでも許されたけど、もう許されないんだ……」というプレッシャーが自分の周りに集まってくるみたいなホラーな感覚になりました。