子どもは親の異変を見逃しやすい

子どもの方は、若くて元気な頃の親の姿を覚えているので、どうしても、親の衰えを認めたくない、気付きたくない、許せないという気持ちから、親を見ていて気付いた老化のサインや「違和感」を見ないふりをして、早いタイミングで相談することをためらってしまいます。そして「ちゃんとしてくれ」「頑張ったらできるだろう」と、励ますばかりになってしまうのです。

しかし、「まだ大丈夫」と思っていても、包括支援センターの担当者が確認したら、バリアフリーの措置が必要だったり、支援や介護が必要だったりということがあります。子どもの方が、親の異変を見逃しやすいという傾向があるのです。これは、離れて住んでいる親子に限りません。近くに住んでいたり、同居している場合も同じです。

介護保険証のありかを知っておく

最近は、いざというときのために、実家のどこに貯金通帳、生命保険の証書、家の権利書などの貴重品がしまってあるか、帰省したときに確認しているという人もいると思います。その時に併せて確認してほしいのが、親の「介護保険被保険者証(介護保険証)」のありかです。

介護保険証は、介護認定を受けたりするときに必要になるものです。しかし、65歳で自治体から送られてくるので、70代や80代になって実際に必要になったときには、「10年以上も前に送られてきたので、どこにしまったかわからない」と、行方不明になっていることが多いようです。もし紛失していることがわかったら、再発行の手続きまでしておくと、いざというときに慌てずに済みます。

要支援・要介護認定の申請は、包括支援センターの担当者に代理で行ってもらうことができます。介護保険証がどこにあるかがわかれば、担当の方に「あの引き出しにあります」と伝えて申請してもらえます。

財布を開けて中身を確認しているシニア女性
写真=iStock.com/banabana-san
※写真はイメージです

構成=池田純子

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。