精神面の変化にも注意

これまで好きだったことに関心を示さなくなった(⑥)という変化も要注意です。たとえば毎年、大みそかには、NHKの紅白歌合戦を楽しみにしていたのに、「別にもういいわ」と関心を持たなくなるといったことなどがあるでしょう。

僕ら精神科医が認知症の診断をする際に参考にするのが⑦の、今日の日付をわかっているかどうかです。さらに一歩進んで、⑧のように、季節感がわからなくなることもあります。年末年始に買い物に行こう、初詣に行こうというときに、薄着で外出しようとするなどです。反対に、夏の暑いときに、冬のような厚着でいるのも要注意です。

年を重ねると、1回した話を、またしてしまうということはよくありますが、同じ話題を3時間おき、半日おきなど、短時間に何度も繰り返すようになっていないか(⑨)、気を付けてみてください。テレビやトイレ、部屋の電気のスイッチを切り忘れたりすること(⑩)には、物忘れの進行が表れます。

感情の起伏が激しくなる(⑪)というのも、認知症の兆候として挙げられます。以前はそんなことはなかったのに、急に泣いたり怒ったりと、感情のアップダウンが激しくなっていないか、親の様子を思い返してみてほしいとおもいます。

車の運転にも、老化のサインは出やすいので、親が普段車の運転をしているのであれば、できるだけ本人が運転する車の助手席に乗ってみてください(⑫)。急ブレーキを踏んだり、道に迷ったりすることが増えていないでしょうか。高速道路で、合流が苦手になったりしていないかどうかもチェックポイントです。親が運転する車に乗る機会がなかった場合は、車のキズが増えていないかを見るだけでも参考になります。

一つでも当てはまったら地域包括支援センターに連絡を

これらのチェック項目に一つでも該当した場合は、親が住む地域の「地域包括支援センター」に相談してください。

地域包括支援センターとは、一言でいうと「高齢者のためのお悩み相談窓口」です。全国5000カ所以上に設置されていて、ケアマネジャー、社会福祉士、保健師など、介護や医療、福祉のプロたちが大集合しています。担当エリアが決まっているので、実家がどこの包括支援センターの管轄なのか、ホームページで検索したり、役所に聞いたりして確認し、そこに連絡します。

「今、うちの親がこういう状態なんですけど」と相談すると、現状に合わせて最適解をはじき出してくれます。必要に応じて、ケアマネジャーなどの担当者が家に来て、本人の状態を確認し、どうしたらいいかアドバイスしてくれます。介護サービスを受けるための介護認定の申請の方法を教えてくれたりもしますし、親と離れて住んでいる場合には、代理で申請をしてくれます。手すりをつけたり段差をなくしたりといった家のバリアフリーを考えるときにも、相談に乗ってもらえます。

すぐに介護や医療の介入が必要でないと判断された場合でも、センターでは管轄のエリアにどういう高齢者がいるのかを把握する役割があるので、担当者が定期的に様子を確認し、何かあれば子どもに連絡をくれるようになります。