立場の違う相手には「自分視点」で話さない
〇 ○○の観点では、こう思います
会議の場では、立場の違う相手と議論することもあるでしょう。例えば営業部門と開発部門、コーポレート部門と事業部門……立場が違えば担っているミッション(使命・役割)も違い、意見がまとまらないことがよく起こります。
立場が違うだけなのに、ついつい私たちは「相手の意見=相手そのもの」と捉え「あの人は話が通じない」「あいつはわかってない!」「嫌い」など、人そのものの評価をしてしまいがちです。
当の本人は、自分の役割や立場に責任を持って発言しているだけなのに、人間関係の衝突・問題に発展してしまっては、組織間やチーム内外の心理的安全性を下げてしまいます。
そのようなときには「立場をわかってもらおう」と躍起になるのではなく、まずは「自分と意見の間に少し距離をおいた」この言葉を使うことをオススメします。
主語を変えれば「個人vs個人」の対立にならない
利害が対立し、衝突が起こりそうなときに、「これだと、うまくいかないのでは」「もっと、こうしたら」というフレーズを使うと「個人vs個人」の対立になりがちです。
それを「課題やゴール vs ○○の立場」という構図に「スライド」させてみましょう。
具体的に言うと、「私は~」という主語を「○○の観点では」という言葉に置き換えればいいのです。
「新商品のリリースは、いつに設定しましょう? できるだけ今期で実績を積みたいので、早めがいいと思っていて、連休直前を予定しているんですが」
「スケジュールは、お任せします。ただ広報の観点から言うと、企業向けの商品なので、連休直前の新製品のリリースは避けたほうがよいかと思われます。企業担当者が連休明けまで動かないためです」
別の例も見てみましょう。
「このパッケージ、どうでしょう。シンプルなデザインがトレンドなんです」
「モダンなデザインでいいですね! ただ、営業の観点で言わせてもらうと、店頭に並んだとき、他社の製品に埋もれてしまい、目立ちづらいように感じるのです」
「目立たないのは困りますね。じゃあ、派手なバージョンに戻してみましょう」
このように「目立たせたほうがいい」という意見を伝えたいとき「目立ちづらいと思います」とストレートに投げかけると、たとえそれが的を射た意見であっても、相手は聞き入れにくいもの。
しかし「営業の観点で言うと……」というフレーズに変えることで、「発言者個人の好みではなく、営業の視点から、意見をくれているのだな」と受け取られることで、「それなら話を聞こうかな」と建設的な議論をしやすくなります。
図表1のように、それぞれの人が一見バラバラなことを言っているようでも、目的地に安全に向かう同じ船の仲間だということを思い出しましょう!
スターツグループで営業・人事・コンプライアンス部門での経験を経て、2020年プロフェッショナルコーチとして独立。現在はZENTechシニアコンサルタントとして心理的安全性を切り口にコンプライアンス意識の浸透・ダイバーシティの醸成や、デジタルトランスフォーメーションの土台となる組織づくりを支援。「組織・チームで使う言葉」をテーマにした研修を行っている。