男女共学になると成績が2割近く低下することも

ダストマン教授らの研究では、男子校または女子校から共学へと転換した場合、男女ともに大学修学能力試験の結果が悪化したことがわかりました。科目によって異なりますが、低下幅は男子で8~11%、女子で10~18%でした。成績が約1割~2割近く低下する場合もあり、無視できない規模です。

男女の違いについて見ていくと、興味深い結果が示されています。

韓国では共学化を進めた際、制度変更が実施された時の新入生から共学化がスタートとしたため、その時の高2、3年生は男子または女子のみのクラスで授業を行っていました。つまり、「学校には異性の新入生がいるものの、自分たちのクラスには異性がいない」という状況が移行期に存在したのです。

この移行期からすでに影響を受けていたのが男子高校生でした。

男子高校生たちは、「自分のクラスに女の子がいないけれど、学校には女の子がいる」という状況から影響を受け、試験結果が低下したのです。

これに対して女子高生の場合、移行期には成績に変化が見られなかったのですが、完全に共学化した後に成績が低下する傾向が確認されました。

これらの結果から、男子高校生の方が周囲の異性の有無から大きく影響を受け、勉強が疎かになりやすいと言えるでしょう。

減少傾向にある図表を眺める男性の後ろ姿
写真=iStock.com/anyaberkut
※写真はイメージです

男女別学にすると成績は向上し、問題行動が低下

2つ目の事例はカリブ海に位置するトリニダード・トバゴ共和国を対象にしたノースウェスタン大学のクラボ・ジャクソン教授の研究です(※3)

トリニダード・トバゴ共和国では小学校を卒業した12~17歳が通う中等学校のうち、成績の低い20の男女共学校を男女別学へと転換しました。

この結果、男女ともに成績の向上が確認されています。驚くべき点はその効果の大きさです。通常、1クラスの学生数が少なくなればきめ細やかな授業ができるため、教育効果が高まりますが、男女別学化によって1クラスの学生数を約30%低下させた場合と同等の効果が得られました。さらに、男子の場合、18歳までの逮捕割合が約60%低下し、女子では18歳までの妊娠割合が約40%低下しました。

これらの結果から、男女別学化の影響は学習面のみならず、生活面にも及ぶと言えるでしょう。

(※3) Jackson, C, K. (2021). Can Introducing Single-Sex Education into Low-Performing Schools Improve Academics, Arrests, and Teen Motherhood? Journal of Human Resources, 56, 1-39.

別学のほうが学業・生活両面でメリットが多い

これまでの結果を参考にすると、わが子の進学を考える際、どのような示唆が得られるのでしょうか。

まず、中学校・高校では何かに真剣に打ち込んでもらいたいと考えるのであれば、男女別学への進学が良いと言えるでしょう。ただし、習い事等で異性との交流機会を確保し、将来のコミュニケーションスキルに課題を残さないようにする必要があります。

また、中学校・高校で共学を選ぶ場合、コミュニケーションスキルの向上には期待できますが、学業の面ではやや不安が残ります。このため、共学ではより学習支援に力を入れる必要があるでしょう。

大切なわが子の進学を検討する際、男女共学と別学のメリット・デメリットを認識することで、より良い選択ができるようになるのではないでしょうか。

佐藤 一磨(さとう・かずま)
拓殖大学政経学部教授

1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。