韓国では高校を学力ではなく抽選制で決定
まず韓国の高校での研究例について紹介したいと思います。
韓国では高校選択の際、基本的に学力による入試選抜を行わず、抽選によって各校にランダムに振り分ける形式をとっています。これは過度な競争を抑制するために1970年代から実施されてきた政策であり、平準化制度と呼ばれています。
この制度の結果、学生個人の意思とは関係なく、男女共学の高校や男子高、または女子高に振り分けられます。
さらに、韓国ではジェンダーギャプの解消を目的に男子校、または女子校を共学の高校へと転換する政策が取られてきました。
このように韓国では、①抽選によって高校が決まるため、男女共学の高校に通うかどうかは自分で選択できない、②男子校、女子校から共学へ転換した高校がある、という特徴があります。
韓国は男女共学の効果を検証するのに理想的
①や②のような事例は、男女共学または男女別学の影響を計測する際の理想的な環境です。なぜならば、高校を自分の意思で自由に選択できる場合、入学してきた子どものさまざまな面に一定の傾向(偏り)が生じると考えられるためです。
通常、男女共学と男女別学の選択には、子どもや親のさまざまな考えが反映されます。例えば、男女共学の環境下で社交性を育成してほしいといったものや、男子(女子)校でスポーツや勉強に打ち込んでほしいというものです。このため、高校を自由に選択できる場合、入学してきた子どもの学習行動や生活態度に一定の傾向(偏り)が存在すると予想されます。
韓国の場合、抽選制ということもあり、子どものさまざまな面における一定の傾向(偏り)の影響を排除でき、純粋な形で男女共学(or男女別学)の影響を計測できます。
実際の分析例として、ロンドン大学のクリスチャン・ダストマン教授らの研究があります(※2)。
彼らの分析では高校の種別が韓国の大学入試にあたる大学修学能力試験の結果にどのような影響を及ぼしたのかを検証しました。
(※2) Dustmann, C., Ku, H., & Kwak, D. W. (2018). Why Are Single-Sex Schools Successful? Labour Economics, 54, 79-99.