「いじめNG」を発する気のない上司…
いじめに苦しんで、私に相談を寄せられた女性従業員の上司は、いじめがNGというコミットメントをする気がありません。なぜ、このようにコミットしない、あるいは、できない人がいるのでしょうか。それには大きく2つの理由があります。
1つは、失礼ながら、コミットする能力がないためです。この人たちは、人とかかわって問題を仲裁する能力に欠けています。
そして、それを能力の欠如と認めず、自分のすべきことではないと正当化すると、相談者の上司のように、「いじめを解決するなんて自分の仕事ではない」という発言をするようになってしまいます。
こんな上司がいたのでは、部下が困って相談したのが、まるでわるいことのようにさえ聞こえてしまうでしょう。
もう1つの理由があるとすれば、それは組織の体質です。
いじめが好きな人たちの多い組織は、決してめずらしくなく、なぜこんなに性格に問題のある人ばかりが集まるのかと驚くことさえあるものです。
こうした組織には、新入社員が入ってきても、なぜかその体質に染まる人が多く、またそうした人だけが残っていきますから、その体質が引き継がれたままになるのです。
こんな組織では、本来はそうした体質にメスを入れるべき上層部の人材も、いじめ好きであることが多く、性格に問題のある人による悪質な行為を止めさせる「コミットメント」は発せられることはないのです。
コミットメントがあれば社内いじめの対処法は見つかる
いじめなどについて、具体的にどのような対策を講じるべきかわからなくても、コミットメントがあれば、対処する方法は見つかってくるものです。そのために私のような専門家さえいるのです。
しかしながら、コミットメントはその組織の内部からでないと発することができません。
学校であれば、教師や教育委員会などが自主的に行わなくても、保護者からプレッシャーをかけることなどができるかもしれませんが、企業などの組織では、そういうわけにはいきません。
部下の方などから「性格に問題のある人」の言動について相談を受けた方は、まずはコミットメントを発するよう取り組んでみましょう。
組織内でハラスメント的な行為に苦しんでいる人は、同時に、それを適切に扱わない組織にも悩んでいるものです。
彼らの苦悩は、組織がコミットメントを打ち出して、自分を助けようとしていると知れば、それだけでも随分と和らぐものなのです。
もともとグローバル人材育成を専門とする経営コンサルタントだが、近年は会社組織などに存在する「ハラスメントの行為者」のカウンセラーとしての業務が増加中。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では、非常勤講師としてコミュニケーションに関連した科目を受け持っている。著書に『好きになられる能力 ライカビリティ』(光文社)『英語で学ぶトヨタ生産方式』(研究社)『英語で仕事をしたい人の必修14講』(慶應義塾大学出版会)など多数。