不安に駆られて最も安いタイミングで売ってしまう人々
では、一体どうしてこんなことになるのかというと、その原因は投資家の行動にあります。相場が下落したことで不安な心理に陥り、売却してしまう人が出てくる。そのうち、戻ると安心してまた再び買い付けるという行動を繰り返してしまうから、こういうことになるのです。つまり、余計なことをするから儲からないということなのです。何もせずに放っておいた場合の方がずっと高い利益を得ることができています。
実はこれ、今年の3月にロシアによるウクライナ侵攻があって、市場が下落した時も同じことを私はこのコラムに書きました(ウクライナ・ショックで投資家が「絶対やってはいけないこと」と「狙い目の銘柄」)。
結果、今年の日経平均株価の安値は3月の始めですから、私の記事にもかかわらず不安に駆られて売ってしまった人は年初から今までで最も安いタイミングで売ってしまったことになります。別にこれは私の予想が当たったわけでもなんでもなく、往々にしてそういうことは起こりがちだということなのです。
何もせずずっと持ち続けることが大切
何もしない方が良いというのは、別な視点から見てもとても大切です。米国の著名な投資家であるチャールズ・エリスという人がいますが、彼の著書『敗者のゲーム』にはとても興味深いことが書いてあります。S&P500指数のデータを使って1982年から2000年の18年間を調べてみると、その間における最も上がった上位30日を逃すだけでリターンは年収益率11.5%から5.5%へと半減してしまうというのです。
逆に言えば、その30日間だけ投資をしていれば、ごく短期間に莫大な利益を得ることができたことになりますが、それがいつかなどということは事前には絶対にわかりません。多くの人は相場の予想をして売ったり買ったりするわけですが、そういうことをやっていると、往々にしてその上位30日間を逃してしまうことになりかねません。したがって、わからないことを予想して売ったり買ったりするのではなく、何もせずにじっと持ち続けることがとても大切なのです。