円安を心配する必要はない
今回、相場が低迷している理由については世界的な物価上昇傾向、それに対して米FRBの金利引き締め政策、日本の場合は円安による経済への不安ということが一般的には言われていますが、正直言って、こういうのは全て後講釈でしかありません。上がったらそれなりの理由をつけるし、下がった時も同様です。
例えば物価上昇の原因として、ウクライナ紛争を例に挙げる人が多いのですが、本当のところ、2020年のコロナ禍による各国政府の資金支援で世の中にお金がダブついたのが最大の要因でしょう。したがって、いわばコロナバブルを安定的に軟着陸させるために米FRBは金利の引き上げをおこなっているわけで、インフレというのはそのきっかけに過ぎません。
日本の場合も円安が経済に悪影響を与えると言いますが、10年程前に1ドル=80円を割り込む円高になった時は「円高で日本は破滅する」みたいなことを言う評論家の人もいましたが、実はそこから株式市場は長期に上昇を始めているのです。
為替相場というのは単なる両替のレートに過ぎません。為替レートは強い方が、その国の経済力が強いということを表すことになるので、長期的には円高の方がトータルで見ると好ましいと私は考えていますが、だからといって今の円安ですぐに日本経済が大変なことになるとは言えません。実際に輸出産業は非常に大きな利益を上げていますし、先日もユニクロを展開するファースト・リテイリングが史上最高の利益を上げたというニュースが出ていました。
短期的な株価の変動はノイズでしかない
多くのメディアや評論家は上り始めた時や下がり始めた時は必ずそれに同調し、あおるような記事を書く傾向があります。今回も不安をあおるような記事はいくらでも見つけることができます。
でもこのように短期的な株価の変動というのは長い目でみると単なるノイズにしか過ぎませんし、その短いノイズを的確に当てることは不可能です。それに当てる必要もありません。ただじっとしていればいいだけなのですから。
もちろん下がった時に躊躇せずに買うことのできる資力と胆力を持った人はおおいにやればいいと思いますが、多くの人にとっては当たり外れに翻弄されるよりも何もせずじっとしていた方が良い結果が出る可能性は高いと思います。
大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。