10月からiDeCoの制度が変わる。どのような変更内容なのか。経済コラムニストの大江英樹さんは「これまで加入のハードルが高かった会社員が、より入りやすい制度になります。税制上の優遇が大きく入らない選択肢はないだろう」という――。
iDeCoの運用リポート
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加入者が急増中のiDeCo、制度変更でさらに増える見込み

老後の資産形成を自分でおこなう手段として最も優れていると言われるiDeCo(個人型確定拠出年金)へ加入する人が増えてきています。2022年7月末時点での加入者数は約256万人となり、2年前に比べると約64%、100万人も加入者が増えているのです。これに加えて来月(10月)からはiDeCoの制度が大きく変わることで、一段と加入者が増加することが見込まれます。

では具体的にどのように変わるか? ということですが、最も重要な変更ポイントは「企業型確定拠出年金に加入している人でもiDeCoに加入することができるようになる」ということです。厳密に言うと、今までも法律上は「企業型とiDeCo」の同時加入は可能でした。しかしながら、それができるようになるためには、二つの条件が必要だったのです。一つは「企業型における会社が出す掛金の上限を引き下げること」、そしてもう一つは「“iDeCoと同時加入できる”と規約を変更すること」です。

詳しく話をするとややこしくなりますが、要点だけ言えば、これまでは上記二つの変更をすることで一部の従業員にとっては不利になるという現象が起こり得たのです。したがって、法律としては実施可能でも現実には実施することはかなり難しかったというのがこれまでの実情でした。したがって、会社勤めで企業型確定拠出年金に加入している人は事実上、iDeCoにはなかなか加入できなかったわけです。

会社員にとって一気に加入のハードルが下がる

ところが、今回の制度改正で前述した「会社が出す掛金の上限引き下げ」と「規約変更」の手続きが不要となりましたので、これまでとは比較にならないぐらい、iDeCoに加入しやすくなります。なにしろ、iDeCoの加入者は256万人ですが、企業型の加入者は780万人もいます。その人たちの多くがiDeCoを利用するようになると相当なインパクトでしょう。

そこで、まだiDeCoを利用していない人にとって、10月以降はいよいよiDeCo加入の決断をする時期がやってきました。ただし、「加入の決断」と言いましたが、ここでは“2種類の決断”があります。一つは、「iDeCoに加入するかどうか」の決断、そしてもう一つは「企業型のマッチング拠出とiDeCo加入のどちらを選ぶべきか」という決断です。具体的にどういうことなのかお話しましょう。