捨てられない、片づけられない
「ものが捨てられない」「片づけられない」という特性もあります。ものを「要るもの」「要らないもの」で判断して分類することが不得手なため、ものが捨てられず、どんどんたまってしまうのです。
また、部屋を片付けるときには、「最初はゴミを捨てて、次に洗濯物をタンスにしまい、出しっ放しの本を本棚に入れて……」など、段取りを考えて、散らかっているものを、それぞれ決められた場所にしまう必要がありますが、ADHDの人は、段取りを考えて実行したり、ものを決められた場所にしまうことが困難であることが多いのです。片づけている途中で、何をしまおうとしていたのか忘れてしまったり、ふと手に取った本が気になってつい読んで、時間だけ経ってしまうこともよくあります。
衝動性の高さもあるため、例えば歯ブラシやボディソープなど、家に予備が十分あっても、安売りになっているのを見つけたらつい買ってしまったりします。このため、家にものがあふれてしまうことも多いのです。
「努力不足」「家族を軽視している」わけではない
忘れ物が多い、ものが捨てられない、部屋を片付けられない、などが続くと、一緒に住んでいる家族が持ち物の管理をすることになったり、片づけや掃除を担うことになり負担が増えてしまいます。家族の方は、「単なる不注意」「努力が足りない」と捉えることが多いですが、それがもし発達障害に起因するのであれば、本人の意思だけではなかなか改善されるものではありません。
また、大切な用事や重要なイベントを忘れてしまったりすると、家族の側は「大事なことなのになぜ忘れてしまうのか」「家族のことを軽視しているのではないか」と感じて怒りやストレスを抱えたりします。これも実は、忘れた本人はまったくそんなつもりはなく、いくら重要なことだとわかっていても、どうしても忘れてしまうということがあるのです。
体調が悪いのに「今日の晩御飯は?」
ASDはコミュニケーションに関する特性が出やすいので、やはり家族の間でストレスを生む可能性があります。言葉になっていない相手の気持ちを読み取るのが苦手な人が多いという傾向があるのです。
例えば妻が「のどが痛くて熱がある」と伝えても、「今日の晩御飯は何?」「あの服、クリーニングに出してくれた?」などと聞いてしまったりします。そこで妻が「今日は体がつらくて晩御飯を作れないから、コンビニで何か買ってきて」と言うと、自分のお弁当だけ買って帰ってきたりということもあります。