「お金のために働く」と言い切る学生が増えている

職場もまるで“取扱い注意”“火気厳禁”状態で、新人は慎重に指導しなくてはならない存在になっている。

もちろん新人も仕事に対する意欲はある。その一方で公私の区別をはっきりつける傾向があり、以前から職場の飲み会に参加したくない新人が増えている。10年以上前から仕事優先よりプライベート重視派が増えている。前出の調査でも「仕事を優先したい」人はわずかに17.2%、「プライベートを優先したい」人が82.7%と圧倒的多数を占めている。

ただ仕事優先よりプライベート優先といっても、22年卒を含めた最近の学生は「働くことに冷めている」と前出の講師は言う。

「働くのは何のため、と聞くと『お金のため』と答える学生が増えている。『働く意味はお金だけではなく、働きがいなどもあるのでは』と言っても『やっぱり生きていくにはお金が大事です』とはっきり言い切る。何のために働くのかわからなくなっている世代でもある。働くことに冷めている印象があり、大学のキャリア教育や企業でも改めて働くことの意味を自分で考えさせるようにしないと危険だなと感じている」

中高年になると「家族や生活のために働く」という人が少なくない。しかし新卒の新人に「お金のために働く」と言われると、今後の長い職業人生を生きていけるのかと心配になる。新人を育てる組織や上司の役割は非常に重い。

溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト

1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。