職場の人間関係に不安を感じている

正直言って社会人として大丈夫かと首を傾げたくなるが、しかたがない面もあると語るのは、22年卒をよく知る都内の大学でキャリア教育を教えている講師だ。

「コロナ禍で大学構内に入れなくなり、講義もオンラインに切り替わり、事実上2年間放置されていた。対面のコミュニケーションの接点が極端に少なくなり、しかもコロナがどうなるのかもわからない。ウクライナ戦争も始まり、社会情勢をよく理解はできなくても何となく生きにくい世の中になるという不安感を抱きながら生活してきた。就活も対面ではなくオンラインで行われ、内定を得ても将来の先行きが見えないなかで、本当に入りたい会社なのか、自分で決めきれないままに入社した社員も多いと思う」

もともと上下の人間関係の構築力が不得手なうえに、コロナ禍でさらに孤立化し、仕事を含めて自分に自信を持てない新人の姿が浮かび上がる。そうした不安は職場の人間関係や仕事でも表れている。前出の調査で「これから仕事をしていく上でどのようなことに不安があるか」の質問の回答のトップは「上司・同僚など職場の人とうまくやっていけるか」で64.6%だった。2019年調査では43.0%だったが、今年が最も高い割合になっている。

叱らず丁寧な指導をしてくれる上司が理想

同様に「仕事に対する現在の自分の能力・スキル」に不安を持つ人は19年の29.9%から今年は53.4%と大きく上昇している。この調査からも入社した会社の仕事をこなせるのか、自分が向いているのかという不安も垣間見える。

また、職場の人間関係に対する不安の裏返しだろう。「あなたが理想的だと思うのはどのような上司や先輩ですか」という質問に対し、断トツに多かったのは「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」で、71.7%だった。毎年の調査でもトップだが、新型コロナ発生当初の2020年入社の59.3%を大きく上回っている。それだけコロナ禍で社会から隔絶され、不安な日々を送っていた空白の2年間を物語っているのかもしれない。

部下との面談で笑顔を絶やさないよう努力する上司
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しかしこの「丁寧な指導」には裏がある。理想の上司として「場合によっては叱ってくれる上司・先輩」という選択肢もあるが、2012年の調査では33.7%と比較的高い割合だったが、その後漸減し、20年に19.9%、今年は17.6%と低率にとどまっている。“叱るのは愛のムチ”とか、「叱る場合は別室で。本人を諭すような叱り方が大事」と、マネジメント教育を受けてきた管理職にとっては、とにかく叱るのはダメと釘を刺されたら途方に暮れるしかないだろう。