異動早々「商品回収」が発生

そして2016年、サークルKとサンクスはファミリーマートにブランド転換された。柘植さんはファミリーマートの(現)商品本部へ異動。加工食品・菓子グループのマネジャーとして、初めて商品開発に携わることがかなえられたのだ。

実はそこでも着任早々に大変なトラブルが待ち受けていた。菓子メーカー で原材料に異物が混入していることが判明 。急遽、商品の回収が決まったのだ。ファミリーマートの商品本部では、その商品を扱う店舗や販売業者などへの対応を求められ、あちこちから電話がかかってくる。

何もわからないまま判断を迫られたときは本当に怖かったと振り返る。

「その後も大きなトラブルが相次いで、思わず担当に『こんなにトラブルってあるものなんですか?』と聞くと、『数年に1回くらいのトラブルが考えられない短期間で起こっています』と。おかげで私も腹が据わりました(笑)」

着任して3カ月ほどは、部下が提案した商品の企画もなかなか部長に通らず、毎日のように言い争いをしていたという。部長に怒られていることの意味もわからず、「おっしゃっていることがわかりません、何をすればいいんですか?」という状況だったが、半年くらいでようやく自分のやりたいことをメンバーにも共有できるようになっていく。

なかでも苦労したのが、菓子の中でも主力のチョコレートだった。

「あまりチョコが得意じゃなかったので、おいしいかどうかの判断をしていいのかという不安はありました。だからいつも、『ごめんなさい』と言いながら食べていたんです。それでも信頼できるメンバーに恵まれて、本当にチョコが好きな人たちにおいしいといってもらえる商品づくりに取り組んできました。主観の“おいしい”以外の角度から、客観的に良い商品づくりをサポートできるという意味では、私がいる意味もあるかなとようやく思えるようになりました」

マネジャーとしてすべての橋渡しに

ファミリーマートが創立40周年を迎えたのは、2021年9月。全国には約1万6600店の店舗があり、新たなプライベートブランド「ファミマル」が立ち上げる。そのブランドマネジャーとして、統括を担うことになった。

「ファミマルのコンセプトは『ファミリークオリティ』。大切な家族に安心してお薦めできる品質と安全性を目指し、パッケージや商品名、食材の産地、環境への配慮にもこだわっています」と柘植さん。

たとえば、「カリっと香ばしいアーモンドチョコレート」にはサステナブルカカオを使い、ロカボ糖質量を明記。オリジナル飲料の「ごろごろ果肉バナナミルク」には、「もったいないバナナ(流通過程でキズや熟度などを理由に廃棄されているもの)」を使用し、人気商品のひとつになっているという。

こうして日々、新たな商品の誕生に携わっている柘植さん。今、どんな思いで仕事に向き合っているのだろうか。

「コンビニは新しいことに挑戦しながら成長し、時流の中でどんどん変化している業態です。今のお客さまにとって、どのような商品が求められ、いかに役立つことができるか。それを皆で形にしていくことが最大の醍醐味だと思っています。加盟店の皆さま、店舗スタッフの方、物流や工場の関係者の方など全部が関わり合って、お客さまに喜んでいただけたときは何よりうれしいですね」