外貨そのものを持つことに意味はない
以前にもこのコラムで書いた記憶がありますが、外国資産を持つことはある程度必要だと思います。それは時代によって成長する国や地域が異なるからです。ただ、国際分散投資を行い、外国資産を持つことは有用だと思いますが、外貨そのものを保有することにはあまり意味はないと言っていいでしょう。
もしFXをやるのであれば、それはあくまでも短期的に利ざやを稼ぐ投機と割り切って行うべきです。言って見れば取引自体をゲームとして楽しむというもので、長期の資産形成にはふさわしくありません。
投資の基本のひとつは、「自分がわかるものに投資をする」ということです。でも「知っている」というのと「わかる」という意味は違います。いくらドルやユーロを“知って”いて、“使ったことがある”のでなじみがあったとしても、その価格変動のメカニズムや取引の特徴をよく理解しないまま大金を投じてしまうと、思いがけない変動で大きな損失を被りかねません。「自分で納得したもの」に「自分自身の判断で」投資するということが基本であることを決して忘れないことが大切です。
1952年大阪府生まれ。オフィス・リベルタス創業者。大手証券会社で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事。定年まで勤務し、2012年に独立後は、「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるように支援する」という理念のもと、資産運用やライフプランニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行った。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。著書に『投資賢者の心理学』(日経ビジネス人文庫)、『定年男子 定年女子』(共著・日経BP)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)、『お金の賢い減らし方』(光文社新書)など多数。2024年1月没。