文系は青山キャンパスなのに理系は相模原…

【岡田】それにうちの大学のように文系は青山キャンパスなのに、理系学部は相模原キャンパスだということも、関係あるのかも……。

【原田】たしかに理系の学部は郊外に追いやられがちですね。実験施設や研究所があるから広いスペースが必要ということなんだろうけれど……。

【井島】やっぱり高校生の時点では、東京の都心で楽しい大学生活を送りたい! というあこがれで学部を選んでしまい、そうすると自然に文系ということになるのでは。

撮影=プレジデントオンライン編集部

【原田】理系だとキラキラした大学生活にはならない、と。

【有坂】大学生でインフルエンサーの人というと文系が多い。そういったSNSなどで目立つ人やタレントさんに理系の女性が増えるといいですよね。女優さんとかでも。文系に比べて、高校生以下が興味を持つきっかけが少ないのかも。

【原田】やはりメディアで目にするものの影響は大きいよね。ネガティブなイメージとしては、実験とかで勉強がたいへんというのもあるのかな。実際にはどうですか?

朝から夕方6時まで「勤務」

【藤井】授業は難しいですが、それが私にとってはよかったです。中学高校の6年間は頑張れるものがなかったけれど、大学に入ってからは学ぶ内容が面白いので毎日、充実しています。研究室の先輩からは「(実験があるので)週2日も休めないし、就職した方が楽だよ」と言われ、文系の人からは「大学時代は遊んだほうがいいよ」と言われますが、それには共感できないんですよね。

撮影=プレジデントオンライン編集部

【有坂】たしかにうちの家族は全員、文系なので、「大学生なのに、こんなに勉強するなんてかわいそう」と言われます。入学前から機械工学科は履修科目が多く卒業するのがたいへんだと言われていましたが、いざ大学に入ってみると、勉強は想像以上にハードでした。

【鈴木】私の専攻も朝から夕方6時まで学校にいるので、もはや「授業」ではなく「勤務」と呼んでいます(笑)。でも、それを楽しんでやっているのが理系の独特なところで、逆に社会に出てからあまり困らなくていいのではと思いますね。

座談会の様子
撮影=プレジデントオンライン編集部

【有坂】専攻している授業のほかに教職課程も取って、部活動もして、バイトもやっているので、家には寝るために帰るだけという忙しい毎日ですが、思い描いていた大学生活のとおりでもあるのでよかったなとも思います。

【井関】私がいた学科が少人数だからかもしれませんが、ずっと一緒にいる分、ラボの仲間と一緒に能動的に学問に取り組んで、お互いにアドバイスしながら高め合えるアカデミックな環境だというのは理系ならではなのかなと思いますね。

撮影=プレジデントオンライン編集部

【井島】部活では私が入りたかった山岳部には男子しかいないなど、入れるところが限られてきてしまうんですが、授業では意外に国際性が豊か。有志が入れる国際プログラムがあって、理系の研究をしていても自分の国際性を高められるのはメリットだなと思います。

【原田】皆さんの話を聞いてみて、僕がリケジョに抱いていたイメージとは変わってきていることを感じます。これまで女性は理系に進むのを暗に反対されるのが問題とされてきたけれど、皆さんは大学に入るまで特に反対もされず理系に進んできている。しかし、社会全体で見れば女性は生涯賃金が男性の7割ぐらいと低いし、理系に進む人も増えていない。女性がしっかり稼いで自分の生活を守れるようにするためにも、もっとリケジョが増えてほしいと思いますね。皆さんの話の中にいくつかヒントがあって、理系の就職事情や仕事と家庭の両立のリアルについてはもっと一般に知ってもらえたらと思います。

原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト、芝浦工業大学教授

1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。