「他国が頑張っているから遅れて見える」わけではなかった
ジェンダーギャップ指数は男女のギャップを0から1の数値で示しており、最高スコアである1は男女格差がない平等な状態(パリティ)を示す。反対にスコアが0に近くなるほど、男女のギャップが大きいことを意味する。
13年連続1位であるアイスランドと日本の総合スコアを比較してみると、アイスランドが0.908と、ジェンダー平等が90%程まで達成されているのに対して、日本は0.650にとどまっており、ジェンダー平等から程遠い状況がうかがえる。
日本のジェンダー格差は今年に限ったことではない。今年の総合スコアは0.650であるが、これは昨年の0.655を下回る。
また、ジェンダーギャップ指数が初めて発表された2006年からの長期的な変化を見ても、日本の総合点はほとんど変わっていない。2006年は0.645で、2015年にかろうじて0.670まで上がったものの、その後はスコアを落とし、挙げ句の果てに今年は2010年(0.652)以前の水準にまで後退した。
つまり、男女格差が大きいだけでなく、長期的にみても改善の傾向がないのであり、それこそが問題なのである。
この数値から言えるのは、これまで言い古されてきた「諸外国が頑張っているから相対的に日本が遅れて見えるだけ」というのは言い訳に過ぎず、「日本はこの十数年間ジェンダーギャップを放置してきた」ということである。
コロナでさらに開いた格差
分野別の数値からはさらに詳細が見えてくる。
経済と政治分野で男女差は一貫してとても大きい。とりわけ、昨年(2021年)と比べると、今年は経済分野で121位まで順位を下げて(昨年117位)おり、スコアも0.604から0.564に下がった。経済分野の男女格差が開いたのは、女性の労働参加率の下落幅が大きかったことが響いた。
「男女共同参画白書」でも、コロナ禍の影響には男女差があると指摘されている。特に小、中、高校の一斉休校があった2020年3月から4月には、男女ともに就業者数が大幅に減ったが、女性の就業者の減少幅は男性より1.8倍も大きかった。
その後も、女性の就業率はなかなか回復せず、回復の速度も男性より遅い。元々貧困率が高くケア責任も担っているシングルマザーたちは、特に苦しんだ。コロナ禍は「女性不況」とも言われるほど、女性に大きなダメージを与えたが、それに対する政府の対策はジェンダー格差を十分に考慮していたとは言えない。定額給付金は世帯主にまとめて支給され、雇用維持のための各種支援も企業を通じて行われた。コロナ禍以前から存在していたケア負担や不安定な労働条件が原因で労働市場から撤退せざるを得なかった女性たちに、スピード感を持って的確な支援を届けることができなかったのである。