事例(5)忙しそうにしている先輩がいても手伝わない

先日聞いた話です。

上司や先輩と取引先に向かうため、午前11時に会社の駐車場で待ち合わせをすることになりました。上司や先輩は、待ち合わせの10分以上前から、持って行く資料や物品をオフィスから運び出して車に積み込み始めました。ところがその若手社員は、忙しそうな上司や先輩を横目に、1人で11時ギリギリまでオフィスでお茶を飲んでいるというのです。

上司や先輩は、「ほかの人が忙しそうにしていれば、手伝うのが当たり前だろう」とイライラし、「なんで手伝わないんだ。空気を読め」と注意しますが、本人は、なぜ注意されるのかわからない様子だったそうです。

「適切な行動」「その理由」を教える

発達障害の人は、人の感情を想像することが苦手なことが多く、それがこうした「空気が読めない」「気が利かない」行動につながってしまうのです。

でも「空気を読め」「周りを見て判断しろ」と怒ってもなおりません。「11時に待ち合わせと言われたのに、11時までお茶を飲んでいたのがなぜいけないのか」という反応になってしまいます。適切な行動を具体的に教え、その理由もきちんと説明する必要があります。

例えば「ほかの人たちが忙しそうに荷物を運んでいて、あなたの手が空いているなら手伝おう」と教える。そして「あなたが手伝ってくれれば、荷物を運ぶ作業が早く終わるし、みんなもうれしい気持ちになる。もし手伝わなければ、ほかの人は『みんなで行くのに、あいつだけ手伝わないなんてずるい』と思うだろう」と説明します。その行動をした場合/しなかった場合に相手がどんな気持ちになり、自分がどれだけ損をするかを伝えて、学んでもらうのです。